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宇宙誕生の謎に迫る、LHCついに稼動

Mason Inman
for National Geographic News
September 9, 2008
 
 今月10日に、フランスとスイスの国境にまたがるのどかな村や牧場が広がる大地の下で、待望の世界最大の科学実験がいよいよ開始される。

 世界最大の粒子加速器、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、全長27キロにおよぶ円形のトンネル構造を持ち、光とほぼ同じ速さで陽子を衝突させる。

 欧州原子核研究機構(CERN)の加速器物理学者ジャンゴ・マングルンキ氏は、「最初に計画が出されたのは20年以上前だった。今回の陽子ビームの準備には10年以上かかっている。この加速器がついに稼働を始めるという実感がまだわかない」と語る。

 物理学者たちは、毎秒数百万回の陽子の正面衝突を引き起こすことで、ビッグバンから1兆分の1秒後の宇宙の激しい姿を理解できるのではないかと期待している。

 また、今回の実験は物理学における最大級の謎を解明するのにも役立つと考えられている。例えば、以前から仮説として提示されてきた「ヒッグス粒子」の存在を実証する可能性がある。ヒッグス粒子は「神の粒子」とも呼ばれ、ほかのあらゆる粒子が質量を獲得する上で大きく関与していると考えられている。

 もう1つ、少なくとも部分的には説明が可能になると期待されている謎は、この宇宙のほとんどを占めていると考えられている不可視の物質、いわゆる「暗黒物質(ダークマター)」である。

 さまざまな期待が膨らむが、最初の一歩として加速器で陽子ビームを走らせるのに成功しなければならない。陽子同士の衝突が起こると、エネルギーが放射されさまざまな粒子が形成される。研究チームは、どの粒子が姿を現し、それぞれがどれくらいの頻度で、どのような軌跡で衝突から飛び出すのかを調査する。

 はじめにビームを入射すると2~3時間でトンネルを周回するようになる。これに成功したら、研究チームは数個のバンチを同時に送り出す予定だ。「最初のビームが周回を始めたら長い階段を1段上がることができる。これまで大勢の物理学者が加速器に対してさまざまな試験を行ってきたが、本当にうまくいくかどうかはビームに聞いてみないとわからない」とマングルンキ氏は話す。

 10日にCERNの研究チームが予定しているのは、20億の陽子で構成される単一のバンチを加速器に入射する実験で、まだ第1段階にすぎない。CERNの研究チームは、数カ月後に2本のビームを使用する計画を立てている。それぞれのビームには2808個の陽子のバンチ(粒子群)が含まれ、1つのバンチには1000億の陽子が含まれている。

 ヒッグス粒子を突き止めることに加え、初期段階の成果としてもう1つ期待されるのは、「超対称性」の証拠が発見されることだ。超対称性理論では、今日知られている粒子それぞれに対して、はるかに質量の大きなパートナーが存在すると予想されている。しかし、そのような超対称性粒子はまだ発見されていない。

 カリフォルニア州メンロパークにあるスタンフォード線形加速器センター(SLAC)の素粒子物理学者マイケル・ペスキン氏は、「現在知られていない超対称性粒子の中に、宇宙の物質の80%を占める暗黒物質を構成する粒子があるのは間違いないと考えている。衝突によりさまざまな粒子が生み出されるだろう。超対称性理論が正しいものであるなら、来年の夏までには、LHCは新しい粒子の証拠を発見しているはずだ。もっと大きな驚きがもたらされる可能性だってある」と話す。

 今回の実験に対しては、一部の人がその危険性を指摘している。例えば1つの可能性として、衝突により物質が過度に圧縮されるため、物質が崩壊し、極小のブラックホールが生成されてしまうというものだ。

 しかし、CERNの物理学者もCERN以外の研究者も、「そのようなブラックホールが形成されても心配する必要はない。普段から地球に衝突している宇宙線にはもっとエネルギーの強いものがある」と話している。

Photograph © CERN
 

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