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地球のはるか上空で、「ヒス音」と呼ばれる謎の低周波が鳴り響いている。アメリカの研究チームがNASAの磁気圏観測衛星テミス(THEMIS)から送られたデータを基に、このヒス音の発生源が「コーラス」と呼ばれる宇宙からの電磁波であることを突き止めた。
観測衛星テミスが本来の目的として観測していたのは、荷電粒子間の激しいエネルギー交換で生じる「サブストーム」という現象で、地球の両極地域でオーロラを引き起こす原因になっているものだ。
太陽から放出されるこれらの荷電粒子は、地球の磁場に捕捉され、その周囲にバンアレン帯と呼ばれる環状の放射線帯を形成する。この放射線帯が原因で、人工衛星や宇宙船、船外活動を行う宇宙飛行士などが有害な放射線にさらされることがある。そのため、ヒス音がバンアレン帯にどのような影響を与えているのかを解明できれば、バンアレン帯の挙動を予測するのに役立つのではないかと期待されている。
太陽活動は現在著しく停滞しているが、2012年には再び活発化するとみられている。したがってそれ以降は、太陽嵐が吹き荒れ、地球に飛来する荷電粒子も増加すると予想される。
地球を取り巻く放射線帯では、地上の受信機を通して聞くと「スー」というかすかな雑音を伴う電磁波が観測される。研究者らはこれを「プラズマ圏ヒス音」と呼ぶ。このプラズマ圏ヒス音には、放射線帯に捕捉されている有害な電子を除去する働きがあると考えられている。プラズマ圏ヒス音の影響を受けた電子は、安定軌道を外れて上層大気圏に達し、そこで消滅するというのである。
研究チームのリーダーを務めたカリフォルニア大学ロサンゼルス校のジェイコブ・ボートニク氏によると、研究者らは40年以上もの間、プラズマ圏ヒス音の発生源に頭を悩ませてきたという。
1950年代、宇宙から放射される電磁波が新たに発見され、その雑音が鳥の群れのざわめきに似ていることから「コーラス」と名付けられた。そして、このコーラスがプラズマ圏ヒス音の発生源だとする理論モデルが提唱された。
だが、この説を実証することは困難だった。そのためには高精度の機器を搭載した2機の衛星を使って観測を行い、地球磁場の活動が特に活発化する瞬間に、プラズマ圏ヒス音とコーラスの双方を別々の場所から同時に記録する必要があったからだ。
そんな中、ボートニク氏のもとで研究を行っていた1人の学生が、磁気圏観測衛星テミスから送られたデータの中から、この説を実証する決定的な証拠を偶然発見した。現在、テミスは5機稼動しているが、このデータはそのうちの2機から送られたものだ。
そこにはプラズマ圏ヒス音の発生源がコーラスにあることを裏付ける、両者の明確な相関関係が示されていた。ボートニク氏はこう話す。「まさか、これほどの幸運に恵まれるとは思ってもみなかった」。
プラズマ圏ヒス音の発生源が明らかになれば、より正確な放射線帯モデルを構築することができるようになり、ひいては宇宙天気の予測も進歩するかもしれない。
宇宙天気の研究は、地球における気象パターンの研究と共通する部分が多いとボートニク氏は話す。「まずは、宇宙天気のシステムを理解するところから始めなければならない」。だが、それが実現すれば宇宙天気に関するさまざまな予測が可能となり、宇宙現象が地球にもたらす悪影響にあらかじめ対処できるようになるだろう。
この研究成果は、今週発行の「Science」誌に掲載されている。
Image courtesy NASA/Goddard Space Flight Center

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