JAXAの科学者チームは、小惑星探査機「はやぶさ」(重量510キロ)を2010年6月に地球に“衝突”させ、小惑星の接近をシミュレーションする計画を発表した。2003年5月に打ち上げられた「はやぶさ」は、小惑星「イトカワ」に着陸して物質サンプルの採取に成功した後、現在は地球に帰還中である。
確実な帰還を目指して、「イトカワ」のサンプルが格納された耐熱カプセルは大気圏再突入の直前に「はやぶさ」から分離される。専門家たちによると、探査機の本体は地球の大気圏を降下中に分解してしまう可能性が高いという。
今回の計画は「はやぶさ」の当初のミッションには含まれていなかったが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の科学者たちは最近になって、消滅する運命にある探査機の帰還を最大限に活用することを決断した。
「小惑星に見立てた“はやぶさ”は、地球への衝突軌道に乗っている。その動きを監視してそのデータを活用すれば、将来、地球に接近する小惑星の軌道を正確に予測できるようになるだろう」と、JAXA広報担当者の橋本明憲氏は話す。
他国の宇宙機関には地球衝突の可能性がある小惑星を追跡するプログラムがあるが、JAXAにはそのような「地球近傍小惑星」を監視するプログラムが整備されていない。そのため、吉川真氏率いる研究チームが小惑星の軌道、遷移時間と速度、衝突の可能性を計算するプロトタイプ・システムを開発した。
このシステムをテストする機会は2008年10月に訪れた。アメリカのアリゾナ州にあるカタリナ・スカイサーベイの天文学者チームが、地球に接近していた直径約4メートルの小惑星「2008 TC3」をスーダン上空で発見したのである。それは「2008 TC3」が大気圏に突入する数時間前のことだったが、JAXAのシステムが予測した突入時刻は誤差0.5秒以内、突入地点も範囲13キロ内という見事な結果を残した。
研究チームによると、「はやぶさ」の場合はそのときよりも追跡しやすいという。大気圏突入の時期が数カ月前から予告される上に、探査機の正確な大きさや飛行経路について豊富な情報があるからだ。「はやぶさ」の帰還によって、研究チームは小惑星追跡計算プログラムに微調整を加えることができるかもしれない。
「小さな小惑星でも大きな被害を引き起こす危険性があるため、衝突地点の正確な予測方法を開発することが非常に重要だ」と、前出の橋本氏は述べている。
カリフォルニア州パサディナに拠点を置くNASAの「地球近傍天体プログラム」マネージャー、ドナルド・K・ヨーマンス氏は、JAXAが「はやぶさ」の再突入を追跡する際には国際的に支援する予定だと話す。「最近JAXAが開発したソフトウェアを検証するために、地上の光学望遠鏡で大気圏再突入までを追跡する予定だ。また、サンプルの入ったカプセルが無事に帰還できるように、世界中の望遠鏡が監視を続けるだろう」とヨーマンス氏は言う。
橋本氏によると、「イトカワ」から採取されたサンプルは、初めて小惑星表面から直接採取した試料であり、科学界にとって大きな恩恵となるという。「サンプルを分析してみるまでは何が解明されるかわからないが、少なくともイトカワの組成については多くのことが判明するだろう」と同氏は話している。
Photograph by John Stanmeyer/NGS

印刷用ページ
友人に教える





















