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ケニア南部、遠くにキリマンジャロ山を望むアンボセリ(Amboseli)国立公園は国内有数の景勝地として知られるが、現在、採石場が新たに建設され、爆薬を用いた掘削が進められている。自然保護団体は、ゾウをはじめとする野生生物の移動ルートを脅かすものだと懸念を表明している。
自然保護団体によると、今年5月にケニア最高裁が掘削作業を一時停止する命令を発したが、現在も作業は継続されているという。採石場があるのは面積約1200ヘクタールのオスプク(Osupuku)管理区域で、採掘された石はエマリ(Emali)とロイトクトク(Oloitoktok)を結ぶ新しい道路の建設材料となる。
この管理区域はキマナ(Kimana)地区の土地保有者と非営利団体アフリカ野生生物基金(AWF)の合意の下、2008年に設置された。この地はアンボセリ国立公園とチュールヒルズ(Chyulu Hills)国立公園、ツァボ(Tsavo)国立公園をつなぐ野生生物の移動ルートにあたり、それを保護するのが管理区域設置の目的だ。
AWFのフィエスタ・ワリンワ氏は、「道路建設に反対している訳ではないが、建設材料を採掘する場所が問題だ」と話す。
採石場を運営しているのは中国国営の中国水利水電建設集団公司(シノ・ハイドロ社)で、今年初頭に、「事業地を変更する」と表明していた。シノ・ハイドロ社のアシスタント・プロジェクト・マネージャーのマイケル・チャン氏は、「自然保護団体やメディアの懸念を考慮し、現在、代わりとなる採石現場を探しているところだ」と話す。
しかし、自然保護団体はこれを「空約束だ」と断じている。「わざわざ裁判所に訴え出たのは、シノ・ハイドロ社が別の場所に移動する姿勢を見せなかったからだ。“探している”という同社の主張は口先だけのもので、単なる時間稼ぎにすぎない」と、AWFのワリンワ氏は話す。「現在、あらゆるつてを利用して同地での採石をやめさせようと試みている」。
このまま採石場で操業が続くと何が起こるのだろうか。シノ・ハイドロ社は採石のために爆薬と重機を用いて巨大な穴を掘っていく。自然保護団体によると、この穴は野生生物に危険をもたらすだけでなく、周辺地域に住む人間の生活をも脅かすことになるという。
ワリンワ氏は、「いたる所に採掘穴が増える一方で、保護区を行き来する野生生物は確実にいなくなる」と話す。例えば、動物が移動中に穴に落ちるかもしれないし、採石に伴う騒音により、野生生物が保護区に近寄らなくなることもあり得る。「そして、各国立公園にまたがる生態系が断絶されることになる」。
ゾウの保護活動を行っている非営利団体、アンボセリ・トラスト・フォー・エレファンツ(ATE)のソイラ・セイアレル氏は次のように話す。「採石作業が完了しても、採石場や作業員の簡易宿泊施設は放置される。ゾウの移動ルートは恒久的に変わってしまうだろう。ゾウは毎日通る道と季節ごとに通る道が決まっている。そこが遮断されれば新たなルートを開拓せざるを得ず、人間の居住地を通過するようになる可能性も十分にある。そのような事態に住民が耐えられなくなるのは時間の問題だ。人間とゾウの争いが起き、どちらも苦しむことになる」。
さらに、AWFのワリンワ氏は経済面への影響も無視できないと指摘する。「採石場は観光収入にも大きなダメージを与えるだろう。野生生物がいるからこそ観光客は保護区を訪れるのだ。このままでは、保護区の観光向け施設は閉鎖され、スタッフは解雇か賃金カットを余儀なくされる。特に、野生生物調査員として雇われた若者たちが犠牲となるだろう。保護しモニタリングする対象がいなくなってしまうのだから」。
一方、シノ・ハイドロ社のチャン氏は次のように話す。「アンボセリ国立公園の採石場は強固な道路を建設するのに最適な石を産出する。この石を使えば数年は補修の必要がなくなる。シノ・ハイドロ社が使用する爆薬と起爆装置も合法的なものであり、ケニア環境・天然資源大臣の認可を受けている。また、ケニア政府から爆薬監視の担当員も派遣されている」。
野生生物への影響については、「爆薬が動物に影響を与えることは私たちも理解している。だから、爆薬は日中にしか使わない。野生生物が移動ルートを通るのは夜間から早朝までに限られているし、採石場や宿泊施設が野生生物の移動を妨げるとも考えていない」、と述べている。
Photograph by George Steinmetz

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