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土星の月(衛星)の1つであるエンケラドスでは、地表から水蒸気ジェットが超音速で噴き出している。この水蒸気ジェットの噴出口が、スポーツ競技場ほどの大きさの複数の穴であることが最新の研究で分かった。
エンケラドスの南極から水蒸気やちりが噴出しているという事実は、2005年に初めて発見された。その後、この噴出速度が時速約1600キロで、それぞれ160キロにわたる複数の裂け目(タイガーストライプ)から噴き出していることが確認されている。
今回の研究では、この裂け目に沿って並ぶ比較的小さな穴が、蒸気やちりの噴出源であることが明らかになった。「噴出のまとまりの中に個々のジェット噴射が存在していることが分かりつつある」と、研究チームメンバーであるコロラド大学ボルダー校のラリー・エスポジート氏は語る。
エンケラドスの表面は氷で覆われているが、その少し下には液体の水がたまっており、ノズルのような複雑な水路を抜けるうちに水蒸気となって飛び出しているのではないかと研究チームは推測している。
研究チームリーダーでNASAのジェット推進研究所の惑星科学者キャンディス・ハンセン氏は、「噴出源が液体の水であることを示す証拠がまた1つ得られた」と話す。
土星探査機カッシーニは、2005年と2007年にエンケラドスの付近を通過したとき、この衛星で起きている噴出によって背後から照らす星の光が暗くなっている様子をとらえた。このときのデータに基づいて、エンケラドスの地表から15キロ上空の地点における水蒸気ジェットの速度と密度が割り出され、そこからの噴出口のおおよそのサイズが算出されたのだ。
前出のエスポジート氏によると、「ジェットが裂け目の全域から湧き出ているのでないことは確かだ」という。ジェットの源は0.6平方キロメートルにすぎない小さな領域で、水蒸気の温度によってはさらに小規模な穴である可能性もあると研究チームは指摘している。
この衛星全体で放出されている水蒸気の量は毎秒およそ200キログラムにも上る。ざっと計算すると2~3分毎にホテルのプール1つ分の水が噴き出していることになる。
一方、2005年に比べて2007年に観測された水の量は少なかったことも明らかになった。2007年当時、エンケラドスは土星の潮汐力で噴出口が大きくなるような地点に存在していたため、水量が減っていたのには「驚いた」とエスポジート氏は語っている。現実には想定とは異なる現象が起きているようだ。
NASAのハンセン氏によると、「既に理論物理学者たちはエンケラドスに関するモデルを改変し、今回の発見についても説明が付くような形にする方法を考え始めている」という。「仮説と実際の間でピンポンをするように研究の過程が前後するのはよくあることだ。観測データに基づいて仮説を立て、実証するためにさらに観測を実施し、仮説の正しい点と誤っていそうな点を見極めるのが科学の手法だ」と同氏は述べている。
とはいえ、この衛星の地下に液体の水が存在するという点については、このたびの研究で裏付けられることになった。エンケラドスは太陽系の中で地球外生物が見つかる可能性のある有力な候補とされているが、水が存在するとなればこの仮説も現実味を帯びることになる。
探査機カッシーニは2008年3月に再びエンケラドス周辺をフライバイ(接近通過)している。その際にも噴出物質の調査が行われ、水蒸気だけでなく、メタンガスや二酸化炭素といった有機分子も検出されている。
Image courtesy JPL/NASA









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