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3000年ほど前、イタリアのサルデーニャ島に植民地を築いたフェニキア人たちの社会では、死者の顔に浮かぶ微笑みは必ずしも平穏な最期を意味しなかった。海の商人と呼ばれたフェニキア人の笑みに隠されたおぞましい真実が先日、科学者たちによって解明された。死者に微笑みをもたらしたのは、ある植物の毒性成分だったのである。ドクゼリというその植物には“しわ取り”効果もあり、笑いじわを消す美容効果も期待できるという。
紀元前8世紀頃、古代ギリシャの詩人ホメロスは顔を歪めさせる薬を使ったサルデーニャ島の儀式殺人について記録しており、現在もその文書は残されているが、その中で「嘲笑」や「引きつり笑い」を意味する英語“sardonic grin”に相当する言葉が新語として使われている。「sardonic」の語源はサルデーニャ島を表す「Sardinia」だ。
新しい研究によると、当時、同島に住む体の不自由な高齢者や犯罪者たちは、引きつり笑いを起こす薬草を飲まされて中毒を引き起こした後、高所から突き落とされたり殴打されたりして殺されていたという。
薬草の正体は何世紀も前から謎とされてきたが、今回ジョバンニ・アペンディーノ氏率いる研究チームは、ドクゼリという植物の成分に引きつり笑いを引き起こす化合物が含まれていることを発見した。
セロリのような茎に白い花が咲くこの植物は、現在はイタリア領となっているサルデーニャ島の池や川の畔に自生している。
10年ほど前、サルデーニャ島の羊飼いがドクゼリを食べて自殺するという事件が起こった。このとき発見された死体の顔はニヤリと笑っており、それが人目を引いたという。
同島にあるカッリャリ大学に在籍し、今回の研究にも参加している植物学者のマウロ・バレロ氏は、この事件をきっかけとして、ここ数十年間に島内で起こったドクゼリ関連の死亡事件を残らず調査した。バレロ氏を始めとする研究チームのメンバーは、ドクゼリに含まれる毒素の分子構造を詳しく調べ、それが人体にどのように影響するのかを突き止めた。
イタリアにある東ピエモンテ大学在籍の有機化学者、前出のアペンディーノ氏は次のように解説する。「発見された化合物は強い毒性を持っており、引き起こされる顔面の神経麻痺などの症状は、古代の記録に残されている死者の引きつり笑いとよく似ている。ドクゼリが神経毒を持っていることは当時から知られており、薬草として儀式殺人に使われた可能性が最も高い」。
同氏は続けて、「サルデーニャ・バターカップとも呼ばれるキンポウゲ科の多年草ヘアリー・バターカップも候補の1つだが、古代の文書に記されているような湿地には自生せず、毒の特性も異なる。また、ドクゼリは地中海沿岸地域ではサルデーニャ島にしか自生していないため、その点でも儀式に使われていた可能性が最も高い」と話した。
ドクゼリは香りが良く、根も甘い味がするため、特に危険な植物である。アペンディーノ氏は、「通常、毒のある植物は苦みが強いなど、人間が嫌う性質を持っているものだ。しかしドクゼリは葉の形状が食用のセリとよく似ているため、有毒植物であるにもかかわらず容易に口に入れてしまうのだろう」と説明する。
「ただしこの危険な薬草も、今後は化粧水として有効に使うことができるかもしれない。この植物は美容にも応用できるからだ。筋肉を弛緩させる効果があるので、顔に塗ればしわをとることができる」と同氏は語った。
今回の研究結果は、「Journal of Natural Products」誌に掲載されている。
Photograph by DEA/G. Dagli Orti via Getty Images

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