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NASAの火星探査機マーズ・フェニックス・ランダーの観測データを分析した最新研究によると、火星の北極地方では冬になると毎晩、上層の薄い雲から氷の結晶が降り注ぐことが判明したという。
研究チームのリーダーで、カナダのオンタリオ州トロントにあるヨーク大学の大気物理学者ジェームズ・ホワイトウェイ氏は次のように話す。「地球の巻雲(けんうん)という、細いすじ状の雲によく似ている。この雲から降り注ぐ氷の結晶は、地球の北極地方で真冬の空にみられるダイヤモンドダスト(細氷)と同じ性質のものだ」。
また、今回の研究チームの一員でアメリカのアリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学の惑星科学者ピーター・スミス氏は次のように話している。「ただし、氷の結晶に含まれる水分はほんの少しだ。この“雪”が溶けてもごくわずかな水分が残るだけだろう。火星はひどく乾燥した環境なのに、地上に届く雪が降るなんて非常に驚いた」。同氏はフェニックス計画の主任研究員を務めている。
2008年5月、フェニックスは火星の北極付近への軟着陸に成功した。以後5カ月間にわたって貴重なデータを収集したが、火星の過酷な冬に耐えられず機能を停止した。
フェニックスが最初に雲を見つけたのは冬の始まりが近づいてきた9月初旬のことである。搭載された気象観測装置LIDARには、夜になると姿を現す雲がはっきりととらえられていた。観測方法は、レーザービームを大気中に放射してダストや雲から跳ね返ってくる反射光線を記録するというものだ。
研究チームのピーター・スミス氏は次のように話す。「深夜に雲を観測する回数がしだいに多くなり、雲の下部からすじ状のものが降り注いでいることに気付いた。季節が進むにつれて、このすじは火星の地表に近づくようになり、ついには実際に地表まで到達した。要するに、火星で雪が降ったんだ」。
一度降雪が始まると、それ以降はフェニックスの着地点の上空約4キロにある雲から、毎晩のように“雪”が降ったという。また、この氷晶は、朝になると固体から気体へと変化する昇華という現象をみせることも判明した。水蒸気はその後、気流の乱れにしたがって上昇し、上層の大気と混ざり合い、再び雲を形成するようになる。
前述のピーター・スミス氏は、「今回発見された気象パターンは極地域に限られたものだとみられるが、火山の山頂付近など、高地でも同じような降雪現象が起きている可能性はある」と話す。
NASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者マイケル・スミス氏は、今回の研究を受けて次のように話す。「火星で雪が降るとは驚きだ。ただし、火星で雲が発見されたのは今回が初めてではない。以前から、火星の軌道上を周回するNASAの火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーの観測データにより、場所や季節によって雲のパターンが変化することは判明していた。高緯度地方のいわゆる“極雲(polar hood cloud)”についても、その存在は既に知られている。したがって、地表面に霧や霜が存在することは予想されていた。しかし今回の最新データでは、雲が発達する過程や雲の下部が降下していく様子がはっきりと示されている。これほど詳細に仕組みを明らかにした研究は過去に存在しない」。
今回の研究結果により、火星と地球は太陽系の中でも特別なグループに属することがわかった。この2つの惑星だけが、水循環を持つことが実証された天体なのである。
火星で生命は存続することができるのか。常に議論されているテーマだが、今回の“降雪”の発見は、非常に魅力的な手掛かりに加えられることだろう。今回の研究は、7月3日発行の「Science」誌に掲載されている。同号の「Science」誌は、フェニックスのデータに基づく研究で特集が組まれており、火星の地下土壌に氷の層が存在することや、水の性質に大きく関係する炭酸カルシウムや過塩素酸塩が検出されたことが報告されている。
フェニックス計画の主任研究員を務めるピーター・スミス氏は次のように話す。「今回の特集で示された発見によって、火星に最近まで液体水が存在していた可能性が高まった。液体としての水は、私たちが知る形の“生命”にとって欠かせない。もちろん、まだ議論すべき部分は多く残っている。しかし火星には、生命に適した環境が定期的に現れているように思われる」。
Photograph by Bullit Marquez, AP









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