恐竜やその近縁種を絶滅させた天変地異が地球を襲った事件はその歴史に刻まれている。鳥類はその大災害を生き延びたが、新しい研究によると、これを可能にしたのは鳥類の持つ優れた知力だった可能性があるという。
その発想のきっかけは先史時代の海鳥の頭骨にあったとロンドン自然史博物館の研究者が述べている。その頭骨の化石は、ビクトリア朝時代にイングランド南東部で発見されたものだ。
5500万年前のものとされる2羽の海鳥の頭骨を調べたところ、鳥類の祖先の脳がこれまで考えられていたよりも早い時期に大きく複雑に発達していたことが判明したのである。つまり、鳥類の祖先は鳥類とは異なる恐竜や空飛ぶ爬虫類(翼竜)と比べて知力の面で優れていたことを示すものだ。
今回の共同研究を率いたアンジェラ・ミルナー氏は、「約6500万年前に起きたK-T境界の大量絶滅事件後の世界に鳥類がうまく適合できたのは、その大きな脳のおかげではないだろうか」と考えている。K-T境界とは年代区分の用語で、中生代と新生代の境目に当たり、この時期に隕石落下による最後の大量絶滅が起こったことが知られている。当時は古代の鳥類も一部は絶滅しているため、現生の鳥類まで生き延びたのは羽や温血性といった特徴のせいだけではなかったという。
学術誌「Zoological Journal of the Linnean Society」で先月発表されたこの研究は、ロンドン自然史博物館の所蔵する膨大な化石コレクションの中の2つの標本に基づいている。1つは学名「Odontopteryx toliapica」という現存しない巨大な骨質歯海鳥の仲間のものである。もう1つは、「Prophaethon shrubsolei
」という熱帯に生息する海鳥の先史時代の近縁種である。現在のカモメ科のアジサシのような鳥類だ。
ミルナー氏の研究チームでは、頭骨のCTスキャンを利用して脳の大きさと形状モデルを作成した。その結果として判明したのは、古代の鳥類と現生の鳥類では脳の大きさはそれほど差がないということである。また、脳の一部の領域が早い時期から発達していたこともわかった。「この領域はどうやら複雑な動作や認識に関与しているようである。例えば、環境を理解し記憶するような役割を持つ」とミルナー氏は説明する。
このような発見から、調査した海鳥はK-T事件後の厳しい生息環境にうまく対応する能力を備えていたと同氏は推測している。
鳥類の化石の頭骨は時間経過とともに押しつぶされているのが通常であり、K-T事件の時期の化石で形状が保たれている標本はない。しかしミルナー氏は、今回5500万年前の鳥類で確認された脳の進化はおそらく6500万年以上前に始まっていただろうと考えている。
1億4700万年の最古の鳥である始祖鳥(学名:Archaeopteryx)までさかのぼると、その化石から判断して「脳の発達は今回調べた鳥とはかけ離れていた」と同氏は言う。
テキサス大学オースティン校の地球科学者ジュリア・クラーク氏によると、恐竜が絶滅したにも関わらず鳥類が生き残った理由についてはさまざまな対立する学説があるという。
例えば、現生のすべての鳥の先祖は、かつて南半球に存在した古代の超大陸ゴンドワナの最南端に起源があるという説がある。特殊な環境下でK-T事件による環境悪化を免れたのではないかというのだ。また現生の鳥類は、内陸と比べて環境変化の影響が少なかった沿岸の生息地で進化したという説もある。
クラーク氏によると、今回の研究は鳥の進化に関する新たな価値ある証拠を提供しただけでなく、古生物学者の研究意欲を奮い立たせる興味深い新理論をもたらしたという。
「現生のすべての鳥に非常に近いが系統樹からは外れている種について、その脳と骨格のサンプルとなる状態の良い化石を以前から探しており、いまでもノドから手が出るほど欲しい。いまあるサンプルだけでは、最初期の鳥類の脳を完全には理解できない」と、クラーク氏は力説する。
Pictures courtesy Natural History Museum









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