食卓を飾る料理は、今後も外見や味はそれほど変わらないかもしれない。しかし研究者の見解によると、地球温暖化の影響を避けられない近い将来、その中身は大きく様変わりするかもしれない。
食物の未来を創造している農学者たちは、気温や降雨、二酸化炭素濃度のパターンに変化が起きれば、それに合わせて農業も進化しなければならないと考えている。
農業は地球温暖化の影響をさまざまな形で受けることになるだろう。気候の変化によって収穫の増える地域がある一方で、深刻な打撃を受ける地域が出てくる恐れもあるからだ。
すなわち、生育環境の変化に対応するためには、農業従事者は過去数十年間にわたって実施してきた栽培作物の均一化を取りやめ、多品種化の道を進まざるを得なくなるということである。
アメリカにあるワシントン州立大学の植物遺伝学者で、小麦の品種改良にも取り組んでいるスティーブン・ジョーンズ氏は次のように解説する。「20世紀中頃から、農業分野では栽培作物の均一化が積極的に推し進められてきた。ただしそれは1件の農家が1つの作物を栽培するという農家レベルの均一化に留まる話ではなく、農産物全体や地域レベルの均一化でもある。良い例がアメリカの太平洋岸北西部だ。この地域で栽培されている小麦は、全生産量の60~70%がわずか3品種で占められている。このような状況は小麦に限ったことではなく、さまざまな地域であらゆる農産物の均一化が進んでいるのだ」。
栽培作物の均一化により、作付面積を拡大して収穫量を増やすことには成功したが、地球温暖化に起因する変化に対応することは困難になった。もしそのような変化が農場や作物ごとに違えば、対応はさらに難しくなる。「環境が予測通りに変化するとは限らないが、もし本当に激変すれば大きな問題が起こることになる」とジョーンズ氏は指摘する。
同氏をはじめとする研究者たちは、「地球温暖化が進行すれば農産物の収穫量が減少するだろう。その結果、西側諸国では食料品の価格が高騰し、多くの開発途上国では食糧難が深刻化するかもしれない」とコメントしている。
現在は多くの農学者たちによって、収穫量の減少を回避するためのさまざま解決策が研究されている。
メリーランド州ベルツビルを拠点に活動しているアメ
同氏は自身の研究について次のように解説する。「多くの雑草はさまざまな環境に上手く適応している。適応能力に優れた雑草と交配すれば、栽培品種も同じように高い生命力を持つに違いない。例えば食用のイネは、自家受粉が行われる開花時間は午前中から昼ごろまでの2~3時間と短く、この時に気温が摂氏32度を超えると、種をつけることができない。しかし、イネ科の雑草の中には、気温の低い夜間や早朝に受粉を行ってこの問題を回避する種が存在する。この特性を食用イネにも転用できるかもしれない」。
また、現代の作物と祖先種の交配も、気候変動の問題に対する解決策として期待されている。
大気中の二酸化炭素濃度は今後もますます高まっていくと予想されているが、ジスカ氏の研究によると、20世紀初頭に栽培されていたタイプの小麦なら、現在一般的な品種よりもそのような条件にうまく適応できるという。
前出したワシントン州立大学のジョーンズ氏も、この研究に取り組んでいる1人だ。同氏の研究チームは、温暖化の進んだ環境に適した特性を探すため、1850年代以降にアメ
ジョーンズ氏は、除草剤や殺虫剤、化学肥料が大量に使われ始めて以来、注目されることのなくなった特性に特に注目しているという。それは、雑草との競争力や、痩せた土地でも生育できる能力などだ。
そのような特性を生かすことができれば、化学物質の使用量や二酸化炭素の排出量を減らすことにもつながるだろう。
Photograph by John Stanmeyer/NGS

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