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地球の海は、雨のように降り注いだ彗星から生まれたのかもしれない。約38億5000万年前、「後期重爆撃期(Late Heavy Bombardment)」と呼ばれる太古の時代に、何万もの天体が地球や近隣の天体に衝突したとする説がある。
月面はこの衝突で傷だらけになり、巨大なクレーターがいくつも形成されたが、大気のない環境で何億年も保存されたため、現在も地球から観測できる。だが、衝突したのが氷からなる彗星か岩石の小惑星かは解明されていなかった。
デンマークのニールス・ボーア研究所のウッフェ・ヨルゲンセン氏率いる研究チームは、古代の地球の岩石に含まれる特定の金属の量に基づいて、衝突したのは小惑星ではなく彗星だったと推定している。
ヨルゲンセン氏によると、彗星群が衝突する前に地球に海があったかどうかについても活発に議論されているという。地球が形成された当初から十分な水が存在したに違いないと主張する専門家もいれば、初期の地球の熱によって液体は蒸発していただろうと主張する者もいる。「科学者たちが学術的な論戦を繰り広げるには格好のテーマだ」と同氏は言う。
ヨルゲンセン氏のチームは、初期の地球は非常に熱かったので大量の水を保持できなかったと考えている。だが、後期重爆撃期の頃には地球は冷却しており、降り注いだ彗星から水が溶け出して、地球で最初の海となった。
「われわれが飲んでいる水は、すべて衝突体の名残りなのかもしれない」。「Icarus」誌の最新号に掲載される論文にはそう書かれている。
研究チームはグリーンランドの地表付近の岩石に含まれるイリジウムの量を測定し、今回の結論に達した。この岩石は世界で最も古いものの1つであり、年代は重爆撃期の時代にさかのぼるという。
イリジウムは地球上では希少な金属だが、彗星や小惑星には比較的多く含まれている。
計算では、小惑星衝突跡の周囲の岩石に含まれるイリジウムのレベルは約1万8000pptだが、彗星衝突跡の場合はわずか130pptになるはずだという。彗星の大部分は水氷と岩石片の低密度な塊であり、金属含有量が少ないためだ。
また、太陽を周る彗星の軌道は小惑星より長いため、衝突の速度も彗星の方が高い。「彗星衝突による爆発は小惑星よりも激しくなり、イリジウムを含めて宇宙空間に放出される金属の量もその分大きくなる」とヨルゲンセン氏は言う。
研究チームはグリーンランドの岩石に150pptのイリジウムが含まれていることを発見した。後期重爆撃期の“主役”が彗星だったという考えを裏付けるものだ。彗星群の氷はすべて解けて水深1キロ以上の海を形成したとの計算が出ている。
イギリスのカーディフ大学の宇宙生物学者チャンドラ・ウィクラマシンジ氏は、今回の研究には関わっていないが、彗星説を支持している。同氏によると彗星は水だけでなく、生命の源も運んできた可能性があるという。
論争中のいくつかの研究によると、地球最古の生命の証拠は後期重爆撃期に当たる約38億5000万年前にさかのぼるという。「偶然かもしれないが、私には単なる偶然の一致には思えない」とウィクラマシンジ氏は言う。
ヨルゲンセン氏も賛成のようだ。「後期重爆撃期は偶然の出来事だった。もし起きていなかったら、地球上に水もなかったし、生命もなかっただろう」。
Photograph courtesy Nicolle Rager-Fuller, NSF

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