約150万年前、人類の祖先は現代人と同じように軽い足取りで直立歩行していたことが、ケニア北部で発見された足跡の化石から明らかになった。現代人と同じ足の構造を示す最古の足跡である。
アフリカ起源の人類の祖先が樹上生活から平原に進出していった主な理由は、居住環境が寒冷化、乾燥化したためと推測されている。アメリカ、ニュージャージー州ニューブランズウィックにあるラトガース大学の古人類学者ジョン・ハリス氏によると、今回の発見はその説を裏付けるものだという。
発見された古代の足跡は、現代人と同じようにかかとに丸みがあり、はっきりとしたアーチ構造で、親指が他の指と平行に並んでいるという。一方、チンパンジーの足の親指は木の枝をつかみやすいように外側を向いている。
「現代人の足はチンパンジーのような樹上生活向けの構造を失ってしまったが、その代わりにバランス良く二足歩行を行うための基盤ができた」と同氏は解説する。同氏が率いた共同研究の成果は、27日発行の「Science」誌で発表される。
この貴重な足跡は、古代の鳥類、ライオン、アンテロープ(レイヨウ)といった動物たちの足跡に混じって、かつてぬかるみだった場所に刻み込まれていた。ハリス氏は、足跡の主は水を飲みに歩いて行く途中か、そこから帰るところだったのではないかと考えている。
足跡の主はその大きさと間隔から判断して、現代人と同等の体格を有していたとみられる。年代を考えるとホモ・エレクトスが最有力の候補だ。ホモ・エレクトスは長い脚と短い腕を持つ最初の人類である。
ホモ・エレクトスが出現した約150万~170万年前は、世界的な寒冷化が進み、アフリカが熱帯雨林から開放的なサバンナへと変化していた時期である。その影響で、木の実、果実、野菜、動物といった食物源の分散が進んでいた。「食物のある場所が分散化した結果、長い距離を歩いて移動できる動物が人類を含めて自然選択された」とハリス氏は説明する。
ダニエル・リーベルマン氏は、アメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード大学の人類学者であり、人類の歩行の進化に関する専門家でもある。同氏に電子メールで話を聞いたところ、「発見された足跡から判断して、150万年前までにホモ・エレクトスが現代人と同じような足を持っていたことは間違いない」というコメントが返ってきた。
同氏によると、アウストラロピテクス類など最初期の人類も歩行に長けていた可能性があるという。しかし走るためには、バネのようなアーチと短い指を併せ持つもっと現代的な構造が必要になる。ホモ・エレクトスを繁栄に導いた1つの理由が現代的な足であることはまず間違いない。リーベルマン氏は、「ホモ・エレクトスは狩りをしていたことがわかっているが、上手に走れなければどうして槍が発明される100万年以上も前に狩りができただろうか」と述べている。
Image courtesy Matthew Bennett, Bournemouth University

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