for National Geographic News
地球温暖化は予測が極めて難しい。多くの要因が複雑に絡み合っているためだが、新たに発表された研究で予測はさらに困難になる可能性が出てきた。
海は常にかき混ぜられているが、この「海洋混合」は主に海上風や潮流によって引き起こされていると考えられてきた。しかしクラゲを対象とした新たな研究によって、海洋混合の実に3分の1以上が、海洋生物の触手やヒレ、尾などの動きによって引き起こされている可能性が示された。つまり、風や潮汐と同規模ということなのだが、気象科学ではほぼ無視されてきた要因だ。
海洋混合は深度の異なる海水とそれに含まれる塩分、栄養分、二酸化炭素や熱などがかき混ぜられて起こる。したがってその混合の様子を追えば、大気循環と同様に地球規模で熱を輸送する海洋混合のメカニズムがわかる。
もしこれまで考察対象外だった海洋生物が本当に海洋混合の主要因子であるとしたら、地球温暖化の予測などに使われてきた従来の気候モデルは“的外れ”だったことになる。
しかし疑問を呈する科学者もいる。クラゲのような小型生物では、異なる層の海水が混ざるほどの乱流は起こらないというのが理由だ。
今回の研究は7月30日発行の「Nature」誌に掲載されているが、同誌の取材に対してフロリダ州立大学の海洋学者ウィリアム・デュアー氏は、「まったく温度が異なる水の層同士を混ぜ合わせるには、相応の大きさのスプーンが必要だ」とコメントしている。
だが小型生物でも大規模な海洋混合を引き起こせるというのが研究チームの考えだ。研究チームの一員で、カリフォルニア工科大学で生物工学を研究しているカカニ・カティヤ氏は、「海中を動物が移動すると、周囲の海水も一緒に引きずられる」と説明する。
研究チームはパラオの塩湖「ジェリーフィッシュレイク(クラゲ湖)」でクラゲを観察し、その効果を目の当たりにしている。この湖は風や潮流といったその他の混合要因の影響が比較的小さいため、今回の研究には絶好の場所だった。
クラゲの周辺に色鮮やかな色素を撒いたところ、着色された水がオーラのようにその遊泳に合わせて揺れ動いたという。
移動する水の量が動物の大きさや形によって異なるのは当然だが、動物の移動距離もその一要素である。この点についてカティヤ氏は次のように解説する。「水は基本的には動物と同じだけ移動する。動物が500メートル泳げば、周囲の水も500メートル移動するということだ」。
もちろんクラゲは回遊魚のように海を渡ったりはしないが、それでも温度の異なる複数の層をまたがって上昇と下降を繰り返しており、その移動距離は1日数百メートルにもなるという。
海は不思議なもので、海面は激しく波打っていてもその下は驚くほど落ち着いている。かき回す力が小さくても、海洋混合を引き起こすことは可能なのだ。
前出のフロリダ州立大学のデュアー氏は次のように話す。「水面下では、例えば家庭用のハンドミキサーでも1立方キロメートルの海水をかき混ぜることができるはずだ。ましてや巨大イカが泳ぐのであれば、攪拌力は相当なものだろう」。
これに対し、デンマーク技術大学の科学者アンドレ・フィッセル氏は次のよう反論する。「海は具の少ないスープみたいなもので、地球規模で海洋混合が起こるほど生物が密に生息しているわけではない。ただし生物が海水をかき混ぜていること自体は事実だ。海底でポンプのように吸水と排水を繰り返している二枚貝の大群や集団で泳いでいる回遊魚が、局地的に大きな作用を生み出していることは間違いない。とはいえ、気候に影響が出るほどの規模となると疑問であり、この点を明白にする必要がある」。
Photograph by Tim Laman/NGS









印刷用ページ
友人に教える
















