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ヒトからヒトへ感染し致死性を持つ新種の豚インフルエンザがメキシコを中心に流行しており、先週末から、パンデミック(世界的大流行)に至るのではないかという不安が広まっている。しかし、豚インフルエンザそのものについての理解はまだ行き渡っていないようだ。今回は、豚インフルエンザに関して誤解の生じやすい重要な点を専門家に尋ねた。
質問:豚肉を食べても安全か?
回答:これまでと変わらず安全。
たしかに、豚肉など畜産物を扱うときや消費するときにウイルスが伝わることもある。「しかし、今回H1N1豚インフルエンザが広まっているのはその経路ではない」と、アメリカのノースカロライナ州に拠点を置く非営利研究機関RTIインターナショナル(RTI)に所属する公衆衛生政策アナリストのクリスティン・レイトン氏は話す。
豚インフルエンザは呼吸器系ウイルスであり、ヒトからヒトへ感染する。危ないのは豚肉料理ではなくコックのくしゃみなのだ。豚からヒトへの感染だけであれば、ウイルスが広がるのは通常、農家や食肉業者など、動物の体液と接触する機会の多い人に限定されるので、公衆衛生当局の心配もそれほど大きくならない。
質問:マスクの着用で豚インフルエンザの感染を防げるか?
回答:部分的に「はい」、部分的に「いいえ」。
「メキシコで歩行者に配布された青色の外科手術用マスクは、何もないよりはましだが、おそらくその効果は限られたものだ」と、メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院(JHSPH)の微生物学・免疫学の準教授アンドリュー・ペコシュ氏は話す。
このようなマスクは、感染者のくしゃみで出る比較的大粒の水滴を防ぐことはできる。唾液に乗って運ばれるウイルスもあるため無意味ではない。しかし、ウイルス自体はマスクの縫い目よりもはるかに小さく、容易に通過してしまう。N95基準やN99基準に適合した特製マスクであれば、通常のものよりも優れたフィルターとなるが、それでも万全ではない。
ペコシュ氏は、「防衛法としては、マスクだけでなく、手洗いを欠かさないこと、他人との距離を90~120センチに保つようにすること」を推奨している。
質問:またいつものように、メディアが“恐怖”をあおっているだけではないのか? どれほど心配する必要があるのか?
回答:パニックになる必要はないが、無視してよいわけではない。
「動物からヒトへの感染」という状態から「ヒトからヒトへの感染」へと、感染経路を拡大するような特性を持ったインフルエンザウイルスは非常に珍しい。H1N1豚インフルエンザはこの特性を持っているので、潜在的な危険性を秘めているといえる。そして、この点が鳥インフルエンザに対する懸念とは異なるところである。鳥インフルエンザにはまだそのような“特性”が備わっていないからだ。
ヒトからヒトへの感染があるからこそ、公衆衛生当局は豚インフルエンザに対して資源を投入して取り組み、一般の人々に注意を促しているのである。
ただし、JHSPHのペコシュ氏やRTIのレイトン氏などの専門家によると、現在のところ、家に閉じこもる必要はないという。
まだ理由は判明していないが、メキシコ以外では大きな被害が出ていない。「症状が重大化する可能性もあるが、アメリカ国内ではそれほど深刻で直接的な脅威とはなっていない」と、ペコシュ氏は話す。
「ただし、一般の人にとっても注意が必要なのは確かだ。また、公衆衛生当局が積極的にモニタリングや調査を続けていくことも正当だと言える」。
質問:豚・鳥・ヒトのインフルエンザウイルスが混ざった豚インフルエンザウイルスがどうして生まれるのか?
回答:ウイルスの進化に、豚が環境として適しているから。
インフルエンザウイルスは非常に乱雑に増殖し、8つに分かれたインフルエンザ遺伝子はすべて独立して複製される。ある細胞が3つの異なるインフルエンザウイルスに感染すると、ウイルスが増殖する際、複数の親の遺伝物質がランダムに混ざり合って次世代インフルエンザウイルスが誕生する。
「ほとんどの場合、このような“カット・アンド・ペースト”型のウイルスは十分に機能することなく死滅する」と、前出のペコシュ氏は話す。しかしときおり突然変異で、ほかの競争相手よりも優れた特性を持つ新しいインフルエンザウイルスが誕生することがある。
H1N1豚インフルエンザもそのうちの一つだ。ただし、ペコシュ氏によると、同じような例は過去30年の間にいくつも確認されているという。豚が問題となるのは、豚は鳥とヒトのどちらのインフルエンザウイルスにも感染するため、遺伝子の“シャッフル”に非常に適した環境を持っているからである。
Photograph by Julio Cortez/Houston Chronicle via AP

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