National Geographic News
世界最大の死の領域とされる黒海が、人類存続に役立つエネルギーの宝庫になり得るという新たな研究が発表された。東ヨーロッパの陸に囲まれた内海である黒海では、河川から流入した汚染物質によってほとんどの生物が死滅し、生息しているのは極限環境微生物だけという状態が数十年にわたって続いてきた。
ヨーロッパの17カ国に上る国々から有害廃棄物が流入した結果、黒海の水中では酸素が減少し、高濃度の硫化水素ガスが発生している。
だが研究者らによると、そのままでは有毒である硫化水素ガスでも、そこから水素を取り出せれば、新しい形のクリーンエネルギーとしてヨーロッパで利用できる可能性があるという。
「汚染状態の海から水素だけを分離できれば、再生可能なエネルギー源を得ながら、同時に汚染も解消できる。クリーンエネルギーを必要とし、汚染に悩んでいる現状の課題を一挙に解決できるかもしれない」と、共同研究者の一人であるモハメッド・ハクリディア氏は語る。同氏は、トルコのコジャエリ県ゲブゼ市にあるト
研究はまだ初期段階にとどまっているが、同氏と共同で研究したフュスン・セルビン・トゥト・ハクリディア氏は、「熱分解、電気化学的処理、光化学処理といった処理を用いれば、硫化水素から水素を分離できるのではないか」とみている。そのうち最も直接的な手法は熱分解であり、およそ摂氏800~1500度まで加熱することに成功すれば、水素だけを分離できる可能性がある。
ガスの貯蔵方法としては、黒海周辺に数多く見られる地下洞窟を天然の貯蔵庫として利用する選択肢も模索されている。研究者らは貯蔵先の候補地として、トルコで2番目に長い洞窟であるキジレルマ洞窟を挙げ、この洞窟の詳細な調査を考えている。調査の結果、ガスが漏出するようなすき間が見つからなければ、この洞窟が貯蔵に適した場所と認められることになる。
「今後、この種のエネルギーシステムの研究が進み、技術開発が行われることを期待している」と前出のセルビン・トゥト・ハクリディア氏は話す。
この研究結果の詳細は、「International Journal of Nuclear Hydrogen Production and Applications」誌に掲載されている。
Photography by Randy Olson

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