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10月5日、スウェーデンのストックホルムで2009年度のノーベル医学生理学賞の受賞者が発表された。受賞者はアメリカの大学に在籍する3人の科学者で、染色体(遺伝情報を担う生体物質)の保護機構を発見したことが評価された。
3人の受賞者は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエリザベス・ブラックバーン氏(オーストラリア出身)、ジョンズ・ホプキンス大学のキャロル・グライダー氏(アメリカ出身)、およびハーバード大学のジャック・ショスタク氏(イギリス出身)である。賞金の140万米ドルは均等に分配されるという。自然科学3賞で女性2人が同時受賞するのは初めてのことだ。
ノーベル賞委員会の事務局長ゴラン・ハンソン氏は次のようなコメントを発表した。「今朝3人に電話をかけたとき、最初は少し眠そうだった。しかし受賞を知らせると非常に喜んだ様子で、ストックホルムでの授賞式が待ち遠しいと話していた」。
3氏は染色体の末端に位置する構造「テロメア」がコピーされる仕組みを明らかにした。この研究成果を基に、今後はヒトの老化や癌(がん)、遺伝性疾患の理解も進む可能性がある。
「彼らは根源的な謎を解明し、まったく新しい研究分野の扉を開いた」と、イギリスにあるケンブリッジ大学のテロメア研究者シャンカール・バラスブラマニアン氏は話す。
染色体はDNAに書き込まれた遺伝情報を担う生体物質であり、テロメアはその染色体の末端を保護する役目を持っている。
細胞の分裂時にはDNA分子も複製する必要があるが、DNA束の末端は細胞分裂時に劣化する場合がある。理論上、テロメア(および、テロメアを末端に持つ染色体全体)は細胞分裂のたびに短くなるはずだが、長さが変化しない場合もあり、その仕組みは何十年もの長きにわたって謎とされていた。
しかしブラックバーン氏とショスタク氏は1982年、テロメアの特殊なDNA配列が染色体劣化の防止に一役買っていることを発見した。1984年にはグライダー氏とブラックバーン氏がテロメラーゼを発見している。この酵素はテロメアDNAを作り、染色体の短縮と不安定化を防ぐ働きを持つ。
細胞は、分裂を繰り返してテロメアが短くなると老化する。しかしテロメラーゼの活性度が高い場合、テロメアは長さを維持し細胞は老化しない。癌細胞が老化しないのは、このプロセスによって成長と分裂を繰り返すためである。したがって、テロメラーゼの働きを人為的に抑制できれば、癌細胞を撲滅できる可能性もある。実現すれば、癌治療の道が開けるかもしれない。
「現在、この分野で有望な臨床実験がいくつか行われている。テロメラーゼという特殊な酵素の発見は科学界の大きな進歩だ」と、ノーベル賞委員会のメンバーであるカロリンスカ研究所のジャン・アンダーソン氏は言う。
同様にアルツハイマー病など、加齢に伴う一部の病気もテロメラーゼの活性度と関係している可能性がある。この酵素の働きがないと、細胞が早期に老化するからだ。
テロメラーゼの働きを活性化し、老化の進行を抑えることができれば、病状が安定化することも考えられる。
さらに、先天性再生不良性貧血をはじめとする多くの遺伝性疾患もテロメラーゼの欠失が原因とされている。再生不良性貧血は、骨髄中で十分な細胞分裂が行われない病気である。
ケンブリッジ大学のバラスブラマニアン氏は次のように話している。「テロメアの長さを維持する特別な仕組みが働いていることは以前からわかっていたが、実際に何が起きているのか正確には誰も解明できなかった。ブラックバーン、グライダー、ショスタクの3氏は鋭い洞察力をもってこの長年の謎を解き明かし、生物学のまったく新しい領域を切り開いた。これで、不治とされているいくつかの病気に明るい光が差すかもしれない」。
ノーベル賞は、ダイナマイトの発明者アルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年に始まった世界的な賞である。ノーベルは化学者であり、エンジニアでもあった。医学生理学賞に引き続き、物理学賞、化学賞、文学賞、平和賞、経済学賞の受賞者も今後2週間で順次発表される予定だ。
正式な授賞式はノーベルの命日である12月10日に行われ、メダルと賞金が手渡される。

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