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4月25日の世界マラリア・デーを前に発表された研究によって、マラリアを媒介する蚊自身もマラリアと闘っていることが示唆された。世界中でヒトの健康を脅かしている恐ろしい伝染病の運び屋も、実は共通の敵を持つ仲間として問題解決に役立つ可能性がある。
同研究では、蚊が自身の体内に侵入したマラリア原虫のうち、実に80~90%までを免疫システムで死滅させていることも報告された。
3種のタンパク質でマラリアに対抗
蚊の体内にある段階でマラリア原虫の数が減少するのであれば、ヒトの体に入る前に蚊の中でマラリアを退治しようとした方が効果的ではないかという声が一部の専門家から上がっている。
「今回の研究では、蚊の血液中にある3種類のタンパク質が複合体を形成し、マラリア原虫に取り付いて細胞膜に穴を開け、死滅させることがわかった」と、インペリアル・カレッジ・ロンドンの生物学者ジョージ・クリストフィデス氏は語る。血液中に3種のタンパク質が存在することや、そのうちの1種がヒトやほかの動物の持つ病原菌を殺すタンパク質に似ていることは、以前から指摘されていた。だが同氏によると、「この3種を結び付けて考えた研究はこれまでにはなく、そこに解決への糸口があった」という。この研究は「Science」誌の4月10日号に掲載されている。
取り得る手段
蚊の段階までさかのぼってマラリアを撃退するという構想は、長期的にみれば実現可能であり、いまのところ2つの方法が考えられるという。
1つは、遺伝子操作によって、マラリア退治に適した免疫システムを持つ蚊を作り出すという方法である。
「ここで重要なのは、遺伝子を働かせるメカニズム、つまりマラリアと戦う遺伝子に選択的優位性を与える因子を見つけ出し、その遺伝子を繁殖によって蚊の野生個体群に短期間で広めることだ」と、カリフォルニア大学デービス校媒介遺伝研究所のジョージ・ランザロ所長は言う。
ただし、蚊についてこの因子はまだ明らかになっていない。だが、やはり吸血性の虫が媒介するシャーガス病という難病のケースでは、既にアメリカ疾病管理・予防センター(CDC)が同様の構想で実験を始めている。
もう1つの方法として、蚊の体内で働く抗体を開発するという選択肢もある。ヒトの体にできた抗体を蚊に吸わせ、蚊の体内にマラリア原虫がいる段階で撃退するという構想である。
ジョンズホプキンス・マラリア研究所で分子微生物学と免疫学を専門に研究するマルセロ・ヤコブス・ロレナ教授は次のように話す。「蚊の免疫システムが独自に抗体を作り出すことはないので、マラリア原虫はヒトの体内に入るまでの間に成長し、ヒトの抗体から身を隠す能力を持つようになる。だが、蚊の体内にいる段階のマラリア原虫をターゲットにした抗体ワクチンをヒトに接種すれば、蚊がヒトの血を吸ったときにその抗体も一緒に吸うかもしれない。この抗体ワクチンをマラリアのワクチンとともに接種すると考えれば、この方法も現実味を帯びてくる」。
すぐには困難
しかし、このような従来の常識をくつがえす画期的なマラリア対策は、いますぐ実施に移せるほどたやすいものではないようだ。
マラリア原虫に対抗する蚊の体内の防衛機構には、今回働きが明らかにされた3種のタンパク質以外の要因も関与している。今回発表された研究でも、全体像はつかみきれていないとみられる。
同研究では、ヒトには害がないがマウスには感染するマラリア原虫と、研究用の蚊を使った実験を基に結果が導き出されている。とはいえ、このような実験用に用いられる種と野生種は異なる。「実験に基づく研究は、自然界を反映していないことも多い。近年の研究では、蚊がなじみのない寄生虫に対して異なる反応を示すことも報告されている。今回の研究結果は重要な発見といえるが、ヒトに感染するマラリア原虫での検証が必要だ」と、ヤコブス・ロレナ教授は話している。
Photograph by Jim Gathany/CDC

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