Anne Minard
for National Geographic News
December 10, 2008
新しい研究によると、木星の衛星エウロパの氷殻に閉ざされた海は穏やかではなく、荒海であるかもしれないという。そのように海が不安定であるということは、生命の存在する可能性が高くなるということでもある。
ワシントン大学海洋学者ロバート・タイラー氏がコンピューター・シミュレーションを利用した研究を行った結果、木星がその衛星であるエウロパに与える影響は、科学者たちが以前に考えていたものとは異なるかもしれないことが明らかになった。
木星の強力な引力によって、衛星エウロパの固体部分には圧力がかかり、岩が押しつぶされたり、全体を覆う氷が屈曲したりする現象が起きている。しかし、木星の引力がエウロパに与える影響はそれだけにとどまらず、エウロパの隠れた海に大規模な波も引き起こしている可能性があるという。そのような波は、熱などのエネルギーをエウロパ全体に行き渡らせる主要な伝達手段になり・・・
ワシントン大学海洋学者ロバート・タイラー氏がコンピューター・シミュレーションを利用した研究を行った結果、木星がその衛星であるエウロパに与える影響は、科学者たちが以前に考えていたものとは異なるかもしれないことが明らかになった。
木星の強力な引力によって、衛星エウロパの固体部分には圧力がかかり、岩が押しつぶされたり、全体を覆う氷が屈曲したりする現象が起きている。しかし、木星の引力がエウロパに与える影響はそれだけにとどまらず、エウロパの隠れた海に大規模な波も引き起こしている可能性があるという。そのような波は、熱などのエネルギーをエウロパ全体に行き渡らせる主要な伝達手段になり得る。
この新しい理論は、エウロパの海が穏やかだという一般的に持たれている印象とは相容れないものとなった。タイラー氏は論文で次のように述べている。「私たちは急に、非常に躍動的な海が氷の下で飛沫を散らしていると考えざるを得なくなった。エウロパという特定の事例を研究対象としたが、その研究成果はエウロパに限定されるものではなく、海の存在が推測されるほかの衛星にも同じように適用可能である」。
そのような衛星には例えば、同じ木星の衛星であるカリストやガニメデ、土星の衛星であるエンケラドスやタイタンがある。タイラー氏の論文は、今週発行の「Nature」誌に掲載されている。
エウロパの公転軌道はわずかに楕円形を描き、その楕円軌道の端にある急カーブに差し掛かると、エウロパは不安定になり、累積したエネルギーを放出して潮汐を生じさせることになる。そこでタイラー氏は、エウロパは地球と同じようにその潮汐応力のほとんどを海洋波動で消散させている可能性があるという新理論に行き着いた。
カリフォルニア州ロサンゼルスのパサデナにあるカリフォルニア工科大学の惑星地質学者デイビッド・スティーブンソン氏は、この理論を「可能性として興味深い」と評し、次のように述べている。「しかし最終的には、従来の説よりも重要度は低いと判断されることになるだろう。もちろん、消散がどのように起こっているのか理解できずにいる状況であったなら、今回の説はもっと刺激的で有意義なものになっただろうが、残念ながらそのような状況ではない」。
NASAの宇宙探査機ガリレオが1989~2003年の期間に行った木星とその衛星の調査から、エウロパの海水が塩水である可能性を示すデータが得られている。タイラー氏はこれに対し、「必ずしも塩化ナトリウム(塩)を意味しているわけではない。硫酸マグネシウム、つまりエプソム塩であることも考えられる」と話す。
アリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学の地質学者ジェフ・カーゲル氏は1990年代の後半、エウロパの塩はこの衛星に生命を存在させる一要素になるかもしれないと提唱した。
「エウロパに存在する液体やその上に覆い被さっている氷の組成、厚さについてはまだ分からないことが多い。大事なことは、液体の水が存在するということである。そしてこの論文によってエネルギー源という新たな手掛かりが得られたことで、生命の存在についてさらに期待が持てるようになった」とカーゲル氏は指摘している。
Image by NASA