March 27, 2009
今回、最先端の電子顕微鏡を使用した研究で、10個ほどのイオンの小集団から骨形成が始まることが判明した。イオンとは、1ナノメートル(10億分の1メートル)に満たない荷電粒子のことである。
骨は私たちの体を支える軽量で強靱な組織であり、重要な器官を保護する役割も担っている。しかし微細な原子が結集して骨を形成する仕組みについては、長い間解明が進んでいなかった。
研究チームは無機物の炭酸カルシウムが溶解する様子を観察し、約30ナノメートル幅の無秩序なイオン集団が形成されるのを確認した。
この規則性のない集まりがチームの用意した有機物の“表面”まで浮かび上がると、イオンの結晶化が始まり、鉱物が作られたのである。
最終的には約100ナノメートル幅の大きな1つの結晶体が形成された(写真はカラー処理された画像)。
「有機物と無機物の相互作用で重要な役割を果たすのはイオンではなくイオンの集団であることが判明した」と、研究を主導したニコ・ゾマーダイク氏は説明する。同氏はオランダのアイントホーフェン工科大学に在籍している。
実験でシミュレーションされたのは人骨ではなく貝殻の形成である。人骨の主成分は炭酸カルシウムではなくリン酸カルシウムだ。しかしどちらもプロセスはほぼ同じだとゾマーダイク氏は考えている。
「骨形成の原点がわかれば、強固で精密な物質が自然に作り出される“優れた仕組み”を模倣できる」とゾマーダイク氏は解説する。同氏の研究は「Science」誌3月13日号に掲載されている。
例えば、研究室で骨に似た合成物質を生成し、それを代用骨として人体に移植することも可能だ。重コンクリートのような建築資材も、骨にヒントを得た物質から作ることができる。
ゾマーダイク氏は、「特性は変わらないが重さは3分の1という物質を作ることができたら、それは科学の大きな前進である」と話している。
Photograph courtesy Eindhoven University of Technology