National Geographic News
最新の研究によると、地球の大気圏上層部(上層大気)は、太陽からの影響により“呼吸”しているかのように膨張と収縮を繰り返しているという。この影響はこれまで注目されていなかったもので、膨張・収縮現象を測定したのは今回の研究が初めてだ。
研究チームは最新の衛星データを基に、上層大気の一定した“呼吸”のリズムが、強力な太陽風によって引き起こされる地磁気活動の増減と関連していることを発見した。太陽から外に放出されている荷電粒子の流れが太陽風である。
呼吸サイクルは、太陽の特徴の一つであるコロナホールが地球の正面に向いて存在している期間にピークに達すると考えられている。コロナホールは、コロナと呼ばれる太陽を覆う外層大気に黒い穴が開いているように見える部分を指す。そこでは圧力を増した太陽風によって太陽の磁場が吹き払われ、地球に向けて高速の“風”が送り込まれる。
コロナホールから流れ出た高速の風が地球に到達すると、地球の上層大気のガスが熱せられて膨張する。やがて温度が下がると収縮する。このようにして上層大気では繰り返し密度の変化が起こる。
研究チームの一員でコロラド大学ボルダー校のジェフ・セイヤー氏は、「軌道衛星は、大気の膨張・収縮に伴う“密度の山と谷”を飛んでいく。そして、密度の変化に応じて衛星の受ける抗力も変化する」と話す。
水辺を全速力で走りぬけようとするときのように、衛星は密度の高い大気に直面するとスピードが落ち、軌道を守るのに必要なエネルギー量が増加する。予定通りの安全な航路をたどるには通常より多くの燃料と複雑な軌道修正が必要となるのだ。
「上層大気は非常に混雑しており、地球の“呼吸”効果を理解することは大きな重要性を持つ」とセイヤー氏は話す。上層大気の軌道上にはスペースシャトルや国際宇宙ステーション(ISS)、800機以上の宇宙探査機、そしておよそ1万個の宇宙廃棄物が存在している。
セイヤー氏はまた、「熱圏とも呼ばれる上層大気は地球の大気におけるガスの外殻で、宇宙空間プラズマ環境とエネルギーの交換を行っている」と話す。つまり、地球の上層大気は太陽の大気と直接相互作用している領域だ。太陽の上層大気に地球が埋め込まれていると表現してもいいだろう。
高度約85キロから始まる上層大気は、27日ごとに膨張と収縮を繰り返していることが知られている。27日というのは太陽の自転周期である。しかし、これまでは大気の密度に関して27日よりも短い間隔の変化が生じていることに注目する研究はほとんどなかった。
セイヤー氏が参加した研究チームは、およそ5日・7日・9日ごとに生じる密度の変動を発見したが、この変動は地磁気活動や大気組成、赤外線放射などの変動と一致していた。いずれも極端な太陽の気候要因が働いていることを示すものだ。
研究チームは、コロナホールを考慮に入れることでこの“呼吸”のパターンを説明できると考えている。セイヤー氏は例えを用いて次のように説明する。「27日で1周するサーチライトを考えるとわかりやすい。サーチライトが1つならライトの光を目にするのは27日に1回となる。サーチライトが3つあって回転するタイミングを均等に割り当てれば、9日に1回ライトの光を目にすることになる。同様に、サーチライトが4つなら6.75日に1回、5つなら5.4日に1回となる。これが今回の研究で発見した周期だ」。
研究チームの測定データは、2008年5月発行の「Geophysical Research Letters」誌に掲載されている。
モンタナ州立大学ボーズマン校の太陽物理学者デイビッド・クランパー氏は今回の研究を受けて、「太陽活動は、一定間隔ではないが絶えず地球を“たたいている”。水の入ったコップをスプーンでたたいたときのように、地球の持つ固有振動数内で揺れが生じる。今回の研究はそういった固有振動数の一部を発見したのかもしれない」と話す。
NASAマーシャル宇宙飛行センターの太陽物理学者デイビッド・ハサウェイ氏は、「実際にデータを見たわけではないが、今回の研究結果には驚きを感じている。太陽の自転に伴う地磁気活動の27日周期はよく知られているが、9日周期というのは非常に謎めいた現象だ。ただし、大気擾乱(じょうらん)に比べてどれほど重要なものなのかはまだ解明されていない」と話す。
研究チームのセイヤー氏も今後の研究の必要性を認めており、「データ分析に太陽物理学の知見を組み込んでいく予定だ」と話している。
Image courtesy NASA

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