3月、海で行われた大規模な実験が失敗に終わった。地球温暖化と戦わせるため、人工的に藻の成長を促進したところ、エビに似た生物に300平方キロの広さにわたって食い尽くされてしまったのだ。これにより、藻を増殖させて気候をコントロールするという計画に重大な疑問が投げ掛けられた。
長年、科学者は大量の鉄を海に投入し、藻の成長を促すことを提案してきた。藻は光合成の際に大気中から温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を吸収する。そして最終的には、たいてい海底に沈み込むため、CO2を永久に隔離する働きをもつ。しかし、藻が光合成を行う際に必要とする鉄分は、海にはあまり含まれていない。そこで、海に“鉄の肥料”を与えることが提唱されてきた。
こうした実験は既に10回以上行われており、中には成功例もある。しかし、生態系に予測不能な反応が起きるといった予期せぬ結果について警告する専門家もいる。
ドイツ北部の湾岸都市ブレーマーハーフェンにあるアルフレッド・ウエゲナー極地海洋研究所(AWI)が23日に行った発表によると、南大西洋で最近行われた大規模な硫酸鉄の投下で、まさに予期せぬ結果が生じた。
硫酸鉄とは粉々になったフロントガラスを思わせる緑がかった結晶で、鉄分が不足した人によく与えられる。そして、藻の成長を促進するために選ばれるのもこの硫酸鉄だ。
ドイツとインドの共同研究チームは数週間にわたり、ドイツの調査船「ポーラースターン」号で、海水に硫酸鉄10トンを混ぜる作業を行った。人工的に鉄分を増やしたこの海水は、アルゼンチンの沿岸水域を出た大西洋に戻された。
実験では予想通り、CO2を吸収する藻が大量に発生した。ただし、望んでいたものとは違う藻であった。研究チームは珪藻を期待していたが、ほとんどが小さなハプト藻だった。ハプト藻は通常、沿岸の海のみに生息し、カイアシという小さいエビに似た甲殻類の好物となる。
南大西洋にハプト藻が大発生すると、すぐさまカイアシがむさぼりついた。こうして、地球温暖化の対抗手段となり得る藻はあっという間に消えてしまった。「すぐに海洋生物に食べられたことは、炭素固定の観点からいうとうれしいことではない」と、AWIで生物科学の責任者を務め、今回の実験にかかわっているウルリッヒ・バスマン氏は言う。
今回の結果に関して専門家の間で意見は割れている。アメリカのインディアナ大学パデュー大学インディアナポリス校で地球科学の教授を務めるガブリエル・M・フィリッペリ氏は、「新たにわかったのは、“投入した鉄の重さ=減少する炭素の量”という一般的な計算はおそらく成り立たないということだ」と言う。同氏は、「地球温暖化の解決策として、鉄の肥料の有効性が疑われる結果だ」と指摘する。
それでも、鉄の肥料の支持者たちは希望を失っていない。「鉄の肥料が炭素を隔離する戦略として有効・無効の判断を下すにはまだ材料が足りない」とアメリカ、カリフォルニア州にあるモスランディング海洋研究所の所長ケネス・コール氏は言う。同研究所も2002年、規模こそ小さいものの、南極の水域に藻を大発生させている。
コール氏は今回の実験の成果として、鉄が藻の大規模な成長を促進できると示されたことを挙げる。「炭素を吸収する植物が必ず生物に食べ尽くされるとは限らない」と同氏は言う。
Photograph courtesy G. Mazzochi, SZN / Alfred Wegener Institute

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