世界銀行の上級エネルギー専門官ペドロ・アントマン氏は、発展途上国を訪問するたびに公益事業担当者からスラム地区を案内されると語る。バラックが立て込む街角で彼が目にするのは、空中を走るもつれた電線だ。
電気料金が払えない多くの貧困層が盗電に手を染めているのは事実である。しかし用途は照明器具や扇風機、テレビであり、エアコンや大型冷蔵庫など電力を大量消費する機器ではない。
違法接続、消費電力の未請求や未払いなど、盗電に伴う損失金額は算出が難しいが、南アジアやサハラ以南のアフリカ、旧ソビエト連邦の一部の国では総発電量の50%が消え失せる。つまり、電気料金の回収率は半分程度に落ち込む。インド一国だけでも、毎年の損失額は数十億ドルに上ると推定されている。
盗電は、犯人や周辺住民にリスクをもたらすだけでなく、地域の電力供給を担う電力会社の財政も圧迫する。この問題に対する切り札は、「スマートメーター」や高度なソフトウェアだ。継続的に電力消費を記録し、データを電力会社に送信することが可能で、世界銀行などと連携して防止策を進めている。
スマートメーター戦略のメリットは、結託の要因となる消費者と公益事業会社社員の接触を遮断できる点にある。アントマン氏が提唱するアプローチでは多くの場合、大量の電力を使用する消費者が真っ先に監視対象となる。派手に盗電していても、検知や記録が可能だと知れば、諦める可能性が高いと同氏は説明する。
アメリカの市場調査会社パイクリサーチでスマートグリッドの調査ディレクターを務めるボブ・ゴーン氏は、世界各地で発生しているエネルギー窃盗への対応策としてスマートメーターは有効だと考えており、今後もますます導入が拡大すると予測している。
「インドやラテンアメリカ、特にブラジルで進んでいる」とゴーン氏は説明する。ブラジル政府は昨年、2020年までに6000万台以上のスマートメーターを導入すると発表した。
「この計画の目的は窃盗防止だけではない。しかし、一部の都市部にとっては、早期のスマートメーター導入による抑止力が極めて重要だ」とゴーン氏は述べる。2014年にワールドカップ、2016年にオリンピック開催を控える同国は、電力供給の信頼性を向上させる必要に迫られているからだ。
スマートメーター普及が必要な理由はいくつもある。通電している電線に触れるのは、そもそも危険な行為だ。盗電が招いた感電死や重傷事故は、毎年数多く確認されている。スリランカでは昨年、電線を盗もうとして男性4人、今年8月には夫が窃盗用につないだ電気ケーブルに触った妻が感電死している。
また電力損失が大きいと、公益事業会社の設備投資意欲が衰え、安定したサービスを提供できなくなる。違法接続によって、安全面の深刻な問題はもちろん、良好な電力網を設計、運用する上で不可欠な見通しが立たないとゴーン氏は警告する。多くの国では、停電が日常茶飯事となっており、経済発展を妨げているという。
「高い窃盗率は弱者をより厳しい立場に追い込む。料金を支払えずに盗みを続ける者が多いが、未払いが増えれば料金引き上げを招く結果になる」。
ロンドンに拠点を置くPAコンサルティング・グループのグローバル・エネルギー専門家グレッグ・エデソン氏も、発展途上国の盗電の防止策としてスマートメーターの有効性を認める一方、「まだコストが高すぎる」と指摘している。
「スマートメーターがもたらす電力網のパフォーマンス向上というメリットは、公益事業会社にとって重要だ。それに、監視されていると知ったら、従業員も不正を働こうなんて考えないだろう」とエデソン氏は述べている。
Photograph by Manish Swarup, Associated Press











印刷用ページ
友人に教える

















