July 16, 2010
NASAの水星探査機メッセンジャーが行った3回目のフライバイ(接近通過)から得られた最新データを分析したところ、水星磁場の尾の部分(磁気圏尾)で驚くほど激しい電磁気嵐が生じていることが確認された。
磁気圏尾は、太陽から放出される荷電粒子の流れ「太陽風」が惑星の磁場を引き伸ばして形成される。磁場が変形し、道路や空港の吹き流しのような流れができるのである。大きな岩にぶつかったときの川の流れを想像してもいい。
火星と金星を除き、太陽系の惑星には磁場とその尾があるが、水星の磁場の強さは地球の約1%しかなく最小である。しかし2009年9月29日のメッセンジャーによるフライバイで、水星の磁気圏尾には太陽風のエネルギーが膨大に蓄積されることがわかった。
磁気圏で起きるエネルギー蓄積・解放現象「サブストーム」の過程で、磁気圏尾の磁力がわずか90秒間で200%も増大したのである。その後、すぐに正常に戻り、90秒でエネルギーは完全に解放されたという。「テイル・ローディング(tail loading)」と呼ぶこの現象は地球でも起きるが規模は小さく、増大する磁力は1時間で約10%に過ぎない。
NASAゴダード宇宙飛行センターの太陽物理学者で今回の研究責任者ジム・スレイビン氏は次のように話す。「たいへん興味深い現象だ。太陽風の勢いが非常に弱い時期にもかかわらず、地球では観測できない大規模なテイル・ローディングが生じている。太陽風が勢いを増したら一体どうなるのだろうか」。
同氏の疑問もまもなく解決するかもしれない。太陽活動の次のピークは2012~2013年と予測されているが、メッセンジャーはその直前の2011年に安定した周回軌道に乗る予定で、まだ観測のチャンスがある。
地球上空では、サブストームやテイル・ローディングが原因となってオーロラが発生する。サブストームが南北極域で地球大気圏への荷電粒子の侵入を引き起こし、空気分子のエネルギーが増大して発光する現象だ。こうした磁気嵐は、地球の人工衛星の活動や宇宙飛行士の健康の阻害要因にもなる放射線のバースト現象とも関係があるという。
しかしNASAのマリナー10号が実施した1974年の水星探査では、放射線バーストは検出されたがサブストームは観測されなかった。メッセンジャーによる最近の探査では、逆の結果が得られている。
この件についてスレイビン氏は、「どうにも理解の範囲を超えた何かが水星で起きている」とコメントする。また、大気がほとんど存在しない水星では膨大なエネルギーを持つサブストームが発生しても、木星で見られるような大規模現象“ハイパー・オーロラ”が生じる可能性は低いという。
まだ謎の多い水星だが、弱い磁場でもオーロラが発生していた過去が存在するのかもしれない。スレイビン氏は、「いろいろな可能性を議論してみたい」と語っている。
このサブストームの研究は、同氏らが水星探査機メッセンジャーのデータを基に著した論文の一部で、「Science」誌オンライン版に7月15日掲載された。
Image courtesy NASA