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太古の昔に刻まれた火星の“河床”地形は流水ではなく、溶岩流で形成されたとする最新の研究成果が発表された。
地球の水辺周辺には峡谷や扇状地のような地形が見られるが、火星でも類似した地形が以前から確認されていた。水の存在は生命誕生の必須条件である。火星で生命の痕跡を探すなら、かつての水の存在を想起させる地形を調べるのが最適だと考えられてきた。
火星の火山地帯の1つ、タルシス高地にはアスクラエウスという火山がある。近くには全長270キロの河床が走っているが、最新の高解像度画像によると水の浸食で形成された地形ではない可能性が出てきたのだ。
アメリカのメリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード宇宙飛行センターの職員で、今回の研究の共著者であるジェイコブ・ブリーチャー氏は次のように話す。「流水が地表を削ったのではなく、数百万年前に溶岩流が固まり、最高40メートルの尾根が形成されたようだ」。
この河床地形は所々が天蓋で覆われているほか、溶岩洞によく見られる噴出口が流れに沿って並んでいる。地球の溶岩洞は、度重なる噴火活動による溶岩流出が長く続くうちに形成される。溶岩流の表面は早期に冷えて固まるが、内部は冷え切らずに流れ続け、その流路が空洞となって残るのである。
ブリーチャー氏は次のように解説する。「地球の川沿いにはないが、火山周辺では必ず見られる地形だ。この河床が溶岩流で形成された動かぬ証拠である。しかし、かつての水の存在が否定されたわけではない」。
ただし、水の存在時期や場所については再考が必要になるだろう。
河床地形の最新画像を作成したNASAチームに関わったアメ
さらに同氏はこう続ける。「今後の調査で、アスクラエウス火山周辺のほかの河床地形についても同じような結果になる可能性は十分にある。現在は火星の表面が次々と高解像度撮影されており、溶岩流について多数の発見が続いている。今回の発見もその1つだ。最新の画像データは河床地形だけでなく、より小規模な火山地形全体の解明に役立っている。火山活動が想像以上に広い範囲に作用することも判明した」。
今回の研究では、ある先駆的な計画にも注目が集まった。NASAの火星探査機マーズ・リコナイサンス・オービタが搭載する高解像度カメラHiRISEを世界中の人々に開放する試みである。
HiRISEが火星表面のカラー画像を地球へ転送し始めたのは2007年。主要任務は、2011年打ち上げ予定の次期火星探査車“キュリオシティ”の適切な着陸地点を見つけることである。ただ、着陸地点の候補は4カ所まで絞り込みが終わっている。そこでNASAはHiRISEの新たな活用法を模索し、撮影場所を誰でも提案できるWebサイト「HiWish」を開設した。
ブリーチャー氏は、科学者だけに開放されたベータ段階のHiWishにリクエストを送り、その提案が実って今回の研究成果を得た。同氏は次のようにコメントしている。「アスクラエウス火山周辺の従来の画像では、大規模な地形しか確認できなかった。しかし地形の形成過程を解明するには、どうしても細部に迫る必要がある。HiRISEが広く開放され、火山地形全体を詳しく観察できるようになったいまこそ、科学者はその形成過程を再検討するべきだ」。
今回の研究は、3月1~5日に開催された月惑星科学学会(Lunar and Planetary Science Conference)の第41回会合で発表された。
Diagram courtesy Jacob Bleacher, NASA









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