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ついに大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が再稼働を始めた。2月28日、LHC初の長期稼働に向けて、最初の粒子ビームが周回した。数週間の作業の後、LHCはビームの速度を徐々に加速し、今回の稼動期間中に潜在能力の半分を発揮するようになる予定だ。
2009年11月20日に修理を終えたLHCは同月30日、あらゆる粒子加速器を凌ぐ世界最高の加速エネルギー記録を達成した後に予定の“冬休み”に入っていた。
LHCはまだ完全な性能を発揮しておらず、今回の再稼働後も出力は半分程度に抑えられる予定だ。フルパワーでの運用を進めるには、設備の増強が必要だという。
ただし、半分の力でも数々の素晴らしい発見が実現できるとLHCのプロジェクトチームは考えている。うまくいけば、3次元以外の余剰次元や“神の粒子”とも呼ばれるヒッグス粒子の検知も可能かもしれない。
粒子加速器は、電場を利用して粒子を極めて細い高速ビームにして加速する。この粒子ビームを正面衝突させてビッグバン直後の極限状況を再現し、さまざまな科学上の謎を解く手掛かりを入手できるとLHCプロジェクトの専門家は期待している。例えば、宇宙の質量の大半を構成しているといわれる目に見えない物質、暗黒物質(ダークマター)の性質についても何かわかるかもしれない。
LHCは欧州原子核研究機構(CERN)が運営しており、フランスとスイスの国境付近の地下、全周27キロの円形のトンネルに格納されている。
LHCは、2008年9月の最初の稼働時に電気系統の故障が発生し、その修復に1年以上が費やされ、稼働を再開したのは2009年11月のことであった。2009年12月、LHCは最初の科学的成果を挙げ、その後、電気代が高いヨーロッパの冬季は予定通り運転を一時停止した。
12月に休止期間に入る前、LHCは高エネルギー物理学の世界新記録を樹立している。2本の陽子ビームをそれぞれ1.18 TeV(1.18兆電子ボルト、TeV=テラ電子ボルト)まで加速し、互いに衝突させた。衝突エネルギーの総計は2.36 TeVに達している。
2010年2月末から始まった今回の稼働期間中には、さらに野心的な計画が進められる予定だ。現在のスケジュールでは、各ビーム3.5 TeV、計7 TeVの衝突エネルギーを生み出す実験を、2011年後半から2012年初めまでに実施する段取りとなっている。
その後は再び一時停止させる。この休止期間中には、復帰後にLHCの稼働限界である14 TeVの衝突エネルギーを達成できるよう、超電導装置の増強が進められる。
2012年の休止期間は約1年が必要になると考えられているが、CERNのビーム部門責任者ポール・コリア氏は、「期間についてはまだ検討中で短縮化を図っている」と話している。
再稼働後のLHCはまだ全力を出せないが、アメリカのイリノイ州にあるフェルミ国立加速器研究所の粒子物理学者で、LHCによる小型ミューオン・ソレノイド(CMS)実験のメンバーでもあるダン・グリーン氏は、「それでも興味深い科学的発見がたくさん期待できる」と話す。
「7 TeVは重要なステップだ。高エネルギー物理学に新たな探究の道が切り開かれるだろう。LHCは半分の力でも“超対称性理論”を支持する証拠をもたらす可能性がある。超対称性理論では、これまでに知られているすべての粒子にはそれぞれに対応するはるかに質量の大きなパートナーが存在すると予想されているが、まだそのような粒子は発見されていない。また、広大な余剰次元の姿も明らかになるかもしれない。線で示される1次元、平面の2次元、立体3次元については誰もが知っているが、それを超える次元は未知の領域で、LHCの活躍が期待されている」。
余剰次元は“ひも理論”でその存在が仮定されている。ひも理論は「素粒子は振動する小さなひものように振る舞う」と想定する考えだが、まだ証明されていない。
「さらに、素粒子に質量をもたらすとされているヒッグス粒子についても、未完成のLHCでも証拠を発見できる可能性がある」とグリーン氏は話す。
LHCのようなデリケートな実験装置にとって期待が大きすぎるとも思えるが、前述のコリア氏は、「これまでのシステムチェックの間、見事なパフォーマンスを示している」と話す。「非常に安定しており、実験結果も再現可能であることが証明されている。科学実験ではこの再現性が特に重要だ。優れた運用体制も備えている。2009年末の稼動再開からすぐ初期実験の実施に至った迅速さがその証拠だ」。
Photograph courtesy Maximilien Brice, CERN









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