シジュウカラのオスを対象に羽毛の色鮮やかさと精子の活力との関係を調べる研究が初めて行われ、胸部に派手な模様のあるオスほど精子が強力であると明らかになった。
自らの子孫を残すため、シジュウカラのオスは色鮮やかな羽毛を使って自身がオスとして優れていることをメスにアピールする。一方メスも同じ目的で、優秀な精子を持つオスを外見から見極めようと必死だ。
人間を含む多くの生物の精子は、活性酸素フリーラジカルによってダメージを受けることが知られている。フリーラジカルは、汚染などのさまざまな要因によってストレスがかかると精液中に生成され、精子の運動能力を低下させる。
フリーラジカルに対抗するため、生物の多くは体内で抗酸化物質を生成している。シジュウカラが持つ抗酸化物質カロチノイドは、フリーラジカルから精子を守り、同時に胸部の羽毛を黄色にする作用があるのだ。
今回の研究では、カロチノイドを多く有するオスほど羽毛の色が濃く、精子もフリーラジカルの攻撃に強い耐性を持つことがわかった。メスはこの違いを認識したうえで、色鮮やかなオスを探しているのかもしれない。
スイスにあるベルン大学の進化生態学者で研究チームのリーダーを務めたファブライス・ヘルフェンスタイン氏は、「人間の男性は羽毛で飾り立てられているわけではないが、シジュウカラに類似する点もある」と話す。例えば、フリーラジカルは不妊症の主な原因であると考えられている。さらに、容貌が魅力的な男性ほど精子の質が高いことを示す研究結果もあるという。
2008年、ヘルフェンスタイン氏らの研究チームは、羽毛の色と精子の関係を詳しく調査するため、スイスのベルンで29組のシジュウカラのつがいに育児負担を増やす実験を行った。負荷がもたらすストレスによって、フリーラジカルが増加することが確認されているからだ。
シジュウカラのつがいは、雌雄が交代で卵を温める。ヒナがかえった2日後、研究チームは巣に別のヒナを2匹加えた。比較対象のため、手を加えない31組の巣も同時に観察を行った。
ヒナが孵化してからの1週間後と2週間後それぞれの時点で、ストレスを与えたオスと比較対象のオスの総排出腔(直腸、排尿口、生殖口などを兼ねる器官)にマッサージを施して精子を採取した。
採取した精子は顕微鏡で観察し、運動の活発さが調べられた。なお、ヘルフェンスタイン氏によると、奇妙にクルクルと動き回る人間の精子とは異なり、シジュウカラの精子は”一直線に”進むという。
ストレスを与えなかったオスの間では精子の活力に差はほとんどなかった。一方ストレスを与えたオス同士を比較すると、羽毛の色が薄いオスほど、色の濃いオスに比べて精子が弱っていた。カロチノイドがストレスに対する耐性を高めていることがわかる。
しかし2週間後に採取されたサンプルでは、羽毛の色が薄いオスの精子の質はわずかに低下していただけだった。「Ecology Letters」誌に発表された最新の研究によると、この結果は、羽毛の色が薄くても、ストレス負荷時において一定の時間が経過すれば耐性ができることを示しているという。
さらに今回の調査では、カロチノイドを混ぜたウジ虫をエサとして与える実験も2度行われた。ストレスを与えなかったオスに対しては、カロチノイドを含まないウジ虫が与えられた。「羽毛の色が薄いオスの精子は、この“ビタミン補給”によって質が向上した。これは、カロチノイドと精子の活力の関連性を裏付ける結果だ」とヘルフェンスタイン氏は話す。
今回の実験結果は、メスのシジュウカラが“浮気者”である理由も示していると同氏は言う。「望むときにいつでも魅力的なオスと出会えるわけではないのだから、地味なオスを仕方なく受け入れる場合もあるだろう。だがその場合でも、優秀な精子を持つ美形とこっそり浮気するのだ」。
天敵に見つけられやすくなるという危険もかえりみず、オスは自身の体色を懸命に誇示する。この理由は長い間謎に包まれてきた。「今回の研究は、この謎を解明するための第一歩となるだろう」と同氏は話している。
Photograph courtesy Frederic Larrey









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