October 6, 2009
2001年に中国とモンゴルにまたがるゴビ砂漠で発見された、ティラノサウルス・レックス(T・レックス)の近縁種にあたる小型恐竜の化石調査が進んでいる。ティラノサウルス(Tyrannosaurus)という名前は「凶暴な爬虫類(tyrant lizards)」に由来するが、この小型種の化石の発見によって、ティラノサウルス属にはそうした凶暴なイメージをもつものだけではなく、多様な種が存在していたことがわかった。
アメリカ、ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館の古脊椎動物学者で、この調査に参加したスティーブン・ブルサット氏はこう話す。「われわれが発見した種はT・レックスの仲間だが、その体つきはバレリーナのようにスマートで、雄雄しい巨体にはほど遠い」。
頭骨、体骨格ともにほぼ完全な形で発見されたこの恐竜(図上)は、アリオラムス・アルタイ(Alioramus altai)と名付けられた。新種の肉食竜で8つのツノがあり、鼻先が前方に突き出しているのが特徴だ。恐竜時代も終わりに近い約6500万年前の白亜紀後期に、緑が生い茂る温暖な氾濫原(はんらんげん)で生活していたとみられる。
両目の上部にはそれぞれ短いツノがあるほか、両側の頬(ほお)からもそれぞれ下向きに短いツノが突き出ている。これら4つのツノはT・レックスにも見られる。だがアリオラムスにはこのほかにも、両側の頬に5センチ長のツノがそれぞれ2本ずつある。ブルサット氏は、「このようなツノは、これまでに発見された肉食恐竜にはなかったものだ」と話す。
ただしこれらのツノは闘争用としては短すぎるため、求愛行動のための装飾だったのではないかと考えられている。アリオラムスはT・レックスに比べると小柄で、骨格も非常に華奢(きゃしゃ)である。頭部の骨格(図下)を見ると、T・レックスとは違ってアゴはそれほど強力ではなく、歯はナイフのように薄っぺらだ。
この発見は、ティラノサウルス属の生態が従来考えられていた以上に多様だったことを示唆している。同じティラノサウルス属の大型恐竜は、体の大きな獲物を力任せに捕獲していたと考えられるが、アリオラムスは、「体の小さな獲物を、俊敏な動きで巧みに捕らえていた可能性が高い」とブルサット氏は話す。
「同じティラノサウルス属の近縁種同士でも、体の構造がまったく異なっている。だからアリオラムスはT・レックスと1つの生態系内で共存できたのだろう。現生の動物では、ライオンとチーターがその良い例である」。
今回の研究結果は、10月5日発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載されている。
Top illustration courtesy Jason Brougham; skull illustration courtesy Frank Ippolito