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2100年には、ボストンを訪問する交通手段が車ではなくボートになっているかもしれない。地球温暖化でグリーンランドの氷床がこのまま溶け続けると、アメリカ北東部やカナダ東部の主要な都市周辺で海面が大幅に上昇するという研究結果が発表された。その海面上昇率はほかのどの地域よりも大きいという。
科学者たちは、氷床が崩壊して淡水が海に流れ込むと大西洋の循環パターンが乱れ、結果として海水の体積が増え、海面が上昇すると考えている。今年3月発行の「Nature Geoscience」誌では、この周辺の海面上昇は約20センチと推定されていたが、新たな予測では、そこからさらに10~30センチ上昇するという。
以前の研究では、氷床が現在のペースで溶け続けた場合、今世紀中にニューヨーク市周辺の海面がアメリカの他地域と比べて2倍上昇することが確認された。
今回の研究では、グリーンランドの氷床融解率が「現在の7%を維持した場合」、「年率1%まで低下した場合」、あるいは「年率3%まで低下した場合」という3つのシナリオが検討されている。多くの科学者たちは後者2つが現実的だと考えており、融解率は今後数十年で実質的に低下すると推測している。
コロラド州ボルダーにある国立大気研究センター(NCAR)に在籍し、今回の研究のリーダーを務めたアイシュエ・フー(Aixue Hu)氏はこう話す。「できれば最悪のシナリオは避けたいところだ。しかし、グリーンランドの氷床が予想より速いペースで溶ける可能性も否定できない。氷床の今後の融解を予測したコンピューターモデルによると、3つのシナリオの中では融解率が低下する後者2つがより現実的だ」。
地球規模での海面上昇は54センチと予測されているが、グリーンランドの氷床融解率が3%の場合、アメリカ北東部やカナダ東部周辺ではその上昇分に上乗せしてさらに30.5センチ上昇する。1%の場合でも、その上乗せは20.3センチだ。
しかし現在の融解率7%が持続した場合は、海面上昇の上乗せは最大50センチにも上り、ニューヨークやカナダのハリファックス、ノバスコシアといった都市部に海水が氾濫することになる。
ただし、コロラド大学ボルダー校の氷河学者ワリード・アブダラティ(Waleed Abdalati)氏は、「7%というのは本当の意味での最悪のケースであり、あまり現実的ではない。それに、“融解率”という言葉の使い方にも少々問題がある」と指摘している。
「氷河は砕けて海に落ちてもすぐには溶けない。つまり、グリーンランドのすべての氷が融解で消失しているわけではない。だが、今回の発見が重要であることに変わりはない。わずかな海面上昇であっても、発生時期によってはその影響力は計り知れないからだ。人口の多い沿岸地域ほど甚大な被害が想定される」。
また、大西洋には熱帯地方から北方へ水を運ぶ“海洋ベルトコンベア”が流れているが、これまでの研究では、この海流とグリーンランドの氷床融解との相互作用が検討されていない。
通常、海洋ベルトコンベアで北方へ運ばれる熱帯の水はだんだんと冷却され、高密度で冷たい北大西洋の海洋深層水となる。しかしグリーンランドの氷床が融解して淡水が流れ込むと、この海流の勢いが鈍り、高密度の深層水が蓄積されなくなる。その結果深層水は高温・低密度になり、北大西洋全体で海水が熱膨張し、海面が上昇することになるのである。
前出したNCARのフー氏は、以上のようなことを北アメリカ北東部の沿岸が特に海面上昇しやすい理由としてあげている。同氏の研究成果は、5月29日発行の「Geophysical Research Letters」誌に掲載されている。
Photograph by John McConnico/AP

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