百聞は一見に如かずとよく言われるが、さて10億ピクセルの画像の価値はどこにあるのか? 最近開発された新技術によって、そのような“ギガピクセル”画像をズーム表示する機能が実現した。これを利用すれば、アメリカ大統領バラク・オバマ氏の就任式の全景画像からオバマ氏個人にズームインし、大統領の堅苦しい表情をピンポイントで表示することもできるのだ。
先週、ギガピクセル新技術のセミナーがアメリカのピッツバーグで開催され、多くの科学者たちが集まった。ウルトラズームできるこの画像が、考古学や地質学、生物学といった科学分野で研究の質を向上させる新たなツールとして注目されている。
ギガパン・システムズ(GigaPan systems)という営利企業が開発したギガパン(ギガ・ピクセル・パノラマ)のシステムを利用すると、市販されている普通のデジタルカメラで超高解像度のパノラマ写真を作成することができる。
ギガパン撮影用のロボットのような三脚にカメラを取り付け、ある場面の撮影を開始すると、その場面を複数に分割したクローズアップ画像が数千枚という単位でシステマティックに撮影される。クローズアップ画像は撮影後、専用のソフトウェアでつなぎ合わされ、1枚のパノラマ画像ができあがるという仕組みだ。
ギガパンのシステムの普及やセミナー、研究などをコーディネートしているのはグローバル・コネクション・プロジェクト(Global Connection Project)という組織である。カーネギーメロン大学、NASA、Google、ナショナル ジオグラフィック協会が設立した非営利の研究組織だ。
この新技術は元々、NASAの火星探査車向けに開発されたものだが、開発に参加したカーネギーメロン大学の科学者たちは当初からギガパンのシステムを市販化したいと考えていた。現在、一部の最新システムは400米ドル以下で入手できる。
「先週開催したようなセミナーの目的は、優れた科学者たちにこの新しいツールを紹介し、使い方を模索してもらうことだ」と、セミナーを主催したカーネギーメロン大学のロボット工学教授イラー・ヌールバクーシ(Illah Nourbakhsh)氏は語る。実際、過去のセミナーの出席者は既にこの技術の応用を始めている。
アメリカのブラウン大学で博士課程を修了し、現在は考古学の特別研究員として在籍しているイアン・シュトラウガン氏は、新“世界の七不思議”の1つであるヨルダンの太古の都市ペトラ遺跡の調査にギガパンを利用している。この技術により、これまでより広い範囲で遺跡を画像化できるようになったという。
紀元1世紀に栄えたナバテア王国の首都ペトラは、バラ色の岩山を削って作られた古典的な様式の大寺院など、石の建造物が多く存在することで有名だ。
「現地に行くことができない研究者も、ギガパン画像を見れば遺跡にあるさまざまな物体の位置関係を把握することができる。これは地図にはできない芸当だ。例えばペトラ遺跡の場合は、住民の生活空間とその周囲にある死者の埋葬地の位置関係を確実に把握することができる。すべての要素がこの精密な“地形図”に詰め込まれている」とシュトラウガン氏は解説する。
アメリカのカンザス州にあるフォートヘイズ州立大学の地質学者ロン・ショット氏もギガパンを活用している1人だ。同氏はこれまでに、風景のパノラマ画像から岩石の微細なクローズアップ画像まで300以上のギガパン画像を撮影している。「この画像では、広い範囲にあるさまざまな物体の細部までを確認できる。実際、ルーペが必要なほど小さな鉱物でも画像上で識別することが可能だ」と同氏は言う。
ショット氏は、堆積岩層のような大きな対象にもギガパンを利用している。断層の両側の岩石層を比較すれば、地質活動の発生場所とその規模を特定することもできる。
同氏はこの技術が発展し、将来的には高解像度の3次元モデリングが実現することを期待している。「氷河や拡大する溶岩ドームをギガパンで撮影しておいて次の日に戻ってくれば、変化の様子を詳細に把握することができる」。
化石の宝庫であるイギリスのダールストン・カントリーパーク(Durlston Country Park)でレンジャーとして働くアリ・タッキー氏は、この国営公園にある古生物学的に貴重な資料を、できるだけ多くの人に見てもらいたいと願っている。
しかし化石は海岸の堆積物に埋まっているため、足下が悪く、観光客や子どもの見学には適していない。「ギガパンを利用すれば、現地にこない人にも化石を見てもらえる。近いうちにそのようなシステムが構築されるだろう」とタッキー氏は話した。

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