for National Geographic News
汚染された空気を吸い込むと、人間のDNAが損傷を受ける恐れがある。わずか3日で遺伝子が組み換えられたり、癌(がん)などの病気の発生率が上昇したりするというのだ。イタリア北西部の都市ブレシアにある製鋼所で働く63人の作業員についてDNAの損傷を追跡調査したところ、そのように示唆する研究成果が得られたという。被験者たちは、通常の作業の中で常に粒子状物質を吸い込んでいた。
研究チームによると、普通の空気を吸っている都市生活者でも同じような損傷を受ける危険性があるという。大気中に漂う細かな“ちり”や、金属粉、“すす”といった粒子状物質は肺に滞留する場合があるが、これらの物質は呼吸器系疾患、肺癌、心臓病などを引き起こす可能性が指摘されている。
「粒子状物質の吸入がどのように作用して健康被害が生じるのか。その仕組みはまだ解明が進んでいない」と、イタリアのミラノ大学に在籍し、今回の研究のリーダーを務めたアンドレア・バッカレリ氏は説明する。
しかし、粒子状物質を吸っていた作業員のDNAが、メチル化率の減少で損傷を受けていたことは確認された。メチル化とは、遺伝子が異なる化学基に結合される生体内作用を指す。化学基が減少するということは、体の定期的な修復にとって重要なプロセスである遺伝子の発現(タンパク質の生成)が減少するということである。
今回の研究で観察されたような遺伝子グループの縮小は、肺癌患者の血液から抽出したDNAでも見つかっている。今回の研究では、作業員の血液は週明けの朝、つまり粒子状物質を大量に吸い込む前に採取され、数日後にも再び採取された。
アメリカのカリフォルニア州サンディエゴで開催されたアメ
たしかに、製鋼所周辺の空気には通常の約10倍に及ぶ粒子状物質が含まれており、その大部分は金属である。
しかし研究チームは、都市生活者にも同じ損傷が発生する可能性があると推測している。ただし、影響が出るまでには数週間から数カ月かかるという。
例えばバッカレリ氏が以前に行った調査では、アメリカのボストンに住む高齢者が、粒子状物質を吸い込んだことによりDNAの損傷を起こしていた。
しかし同氏は、「普通に生活している人にまで話を広げるのはまだ早い。いまは、大気汚染の深刻な状況下で検証を重ねることが重要だ」と述べている。
アメリカにあるオレゴン健康科学大学の医学教授で、アメ
バッカレリ氏の研究チームが行った別の研究では、粒子状物質を原因としたメチル化によるDNA損傷は、葉酸を摂取することで進行を抑えられたり、場合によっては修復さえ可能なことが指摘されている。葉酸は、多くの食品に自然の状態で含まれているビタミンである。「このビタミンを摂取すると、メチル化が効率化する可能性がある。葉酸の摂取量が多い被験者ほど、粒子状物質の影響が心臓に出ていないことが私たちの研究で確認された」と、研究を指揮したバッカレリ氏は述べている。
Photograph by Ron Schwane/AP

印刷用ページ
友人に教える





















