Hayley Rutger
for National Geographic
October 31, 2008
ベリーズで最も標高が高く、常に霧に覆われた雲霧林。その標高1000メートル以上のドイルズ・ディライト(Doyle's Delight)と呼ばれる山頂部に“キノコの宝庫”がある。2007年、ニューヨーク州立大学コートランド校で菌類を研究する科学者ティモシー・J・バローニ氏らが、2週間足らずで40種以上の新種のキノコを発見した。
その中には、サルノコシカケ科の新属に分類されるサーモン色をした新種のキノコもあった。サルノコシカケ科のキノコはアジアで昔から漢方薬として重宝され、研究も進んでいる。そのうちの数種類は、免疫病の治療やがん患者の回復に効果をもたらす可能性が有望視されている。
現在使われている薬剤の4分の1以上は、カビやキノコなどの菌類を由来成分としている。ペニシリンやシクロスポリンの免疫抑制剤もそのうちの1つであり、臓器移植時の拒絶反応の抑制に使用される。ところが発見済みの菌類は、地球に150万種あるとされる菌類の5~10%にすぎず、新種のカビやキノコはまだ見つけられないまま豊富に残されていると科学者らはみている。「自由に使える薬品倉庫があるようなものだが、その薬にはまだ効能書きがない状態だ」とバローニ氏は例える。同氏にはナショナル ジオグラフィック協会の研究・探検委員会(CRE)が支援を行っている。
同氏が新種のキノコの発見と命名に重点的に取り組んでいる一方で、ほかの科学者らはそれらの食用や医療用としての利用方法を研究している。しかし、同氏はそれだけではなく、キノコにはもう1つの重要な特性があり、それが自然界を救う手掛かりとなるかもしれないと話す。
その特性とは、野生の菌類は生息環境の健康状態を測る重要なバロメーターとなり得るということだ。1980年代、ドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)地方では大気汚染が原因で食用のキノコが死滅したとされているが、それからかなり後になって同様に植物や森林にも被害が及んだ。これまでのところ、菌類は生態系を監視する役割として組織立って利用されていないが、バローニ氏は「菌類の盛衰と環境の関係がはっきりすれば、地球上の未開発地にまで広がる環境汚染の状況を知ることができるはずだ」と述べている。
Photograph courtesy Timothy J. Baroni