2月12日、ネアンデルタール人のドラフトゲノム解析が終了した。まだ最初のドラフト版だが、この絶滅したヒト属が乳糖不耐症であったことや、現生人類と同等の基本的言語能力を備えていた可能性があることが示された。
現生人類とネアンデルタール人の系統樹は約45万年前に分岐しており、その後は両種の間で交雑はなかったか、あってもまれであったと考えられている。
ネアンデルタール人は約3万年前に絶滅し、その後は現生人類が地球を引き継ぐかたちになった。しかし現生人類が生き延びて栄えた理由については、議論の決着がついていない。
今回解読された塩基配列から、現生人類とネアンデルタール人のゲノムが99.5%同じであることが示された。今後、現生人類とネアンデルタール人のゲノム、そして現存している類人猿で最も人類に近いチンパンジーのゲノムを比較することで、現生人類を優位に立たせた遺伝子の変化を特定できるのではないかと期待されている。
「ネアンデルタール人のゲノムから、現生人類が今のような人間になった理由がわかるだろう」と、ドイツのライプチヒにあるマックス・プランク進化人類学研究所に所属するジャン・ジャック・ユブラン氏は言う。同氏はゲノム解読プロジェクトの協力者である。
動物の遺伝子は、遺伝子を組み合わせた“文字”で表現される塩基対で構成されている。この遺伝子によって、生物は毛の色から体の形状に至るさまざまな身体的特徴が決まるのだ。一方で、ゲノムは特定の種を特徴付ける遺伝子をフルセットにしたものである。
ネアンデルタール人ゲノムの37億以上の塩基対は、約4年という月日をかけて配列が決定された。しかし遺伝情報の解読が終了したのは約60%の遺伝子だけだ。
マックス・プランク研究所が12日に行った記者会見で発表された最初の解読結果から、現生人類とネアンデルタール人の興味深い類似を見て取ることができる。
例えばこれまでの研究によると、ネアンデルタール人のDNAと現生人類との間では、FOXP2と呼ばれる“言語遺伝子”の同じバージョンが共有されている。「今回の調査結果はその研究を裏付けるものだ」と、チームを指揮するマックス・プランク研究所のスヴァンテ・ペーボ氏は述べている。
この遺伝子は言語能力の発達に関与しているため、ネアンデルタール人は会話が可能だったということも考えられる。「言葉に関わる遺伝子がほかにも多数あるが、私たちと同様に発音できなかったという理由にはならない」と同氏は説明する。
また、ゲノム解読により、成人のネアンデルタール人が乳糖を消化できなかったという証拠も積み上げられた。米国消化器病学会によると、アメリカの約5000万人の成人がこのような乳糖不耐症に悩まされているという。「ネアンデルタール人は、乳離れしたあとはミルクを飲めなかった」と同氏は主張する。
今後も、脳の発達に関する遺伝子などで同じように比較検証を行う予定だという。
「現生人類に知的能力をもたらした多くの進化的変化は、比較的最近起こっていると考えられる。ネアンデルタール人にも同様の変化があるのか調べていくつもりだ」と、アメリカのウィスコンシン大学の人類学者ジョン・ホークス氏は今後の方針を示した。
Photograph by Joe McNally/NGS

印刷用ページ
友人に教える





















