Tasuku Kawazoe
for National Geographic
November 27, 2008
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トトロの森の概要
映画「となりのトトロ」(注1)は、日本はおろか世界中の映画ファンを魅了し、子供から大人まで多くの人に親しまれている大ヒット映画だ。しかし、そうした華やかな一面とは対照的に、その舞台となったのは、私たちのごく身近にあった里山である狭山丘陵だ。
狭山丘陵はもともと東京の貯水池として活用されてきた。その森の中心部には、狭山湖という名で呼ばれる山口貯水池と多摩湖と呼ばれる村山貯水池を抱えている。東西約11キロ、南北約4キロほど、東京と埼玉にまたがるその面積は約3500ヘクタールに及ぶ。東京近郊を空から見ると、その部分だけ緑が残っていることがわかる。しかし、この森も手付かずのままここまできたわけではなく、開発の波に押されながらかろうじて残されてきた場所である。都心に近かったため、常に宅地開発の対象とされてきたのだ。
「となりのトトロ」では、里山に残る豊かな自然とともに、その周囲に広がる畑や田んぼ、集落などの様子が情緒豊かに描かれている。映画の主人公であるサツキとメイが移り住んだ「松郷」地区は所沢に実在し、母親が入院する病院のモデルとされる病院も東村山市の八国山にある。現在の狭山丘陵には、映画で描かれたような田園風景は残されていないが、雑木林だけはかろうじて当時の面影を留めている。しかし、畑や田んぼ、集落といった森を取り巻く環境の変化は森自体にも大きな影響を及ぼしており、森の生態系の多様性は失われてきている。
それでもなお、狭山丘陵には多くの貴重な動植物が今でも生息し、高等植物が約1400種、哺乳動物19種、鳥類200種以上、昆虫類約2500種に及ぶという。その中には、絶滅が危惧されているサシバ(注2)やヒクイナ(注3)などの鳥類のほか、イモリ、ホトケドジョウ(注4)など水辺の生きものも含まれる。狭山丘陵の里山を保全する活動を行っている「(財)トトロのふるさと財団」が2006年にまとめた調査によると、狭山丘陵に生息する希少種は全部で258種もいるという。この調査は地域を限定して行われたものであり、実際はもっとたくさんの希少種が生息している可能性があるだろう。
日本各地で里山と呼ばれる身近な自然環境が減少していることを考えると、この狭山丘陵で生息する希少種は全国規模で考えても貴重なものかもしれない。
※(注1)「となりのトトロ」
スタジオジブリが制作した長編アニメーション。監督・脚本は宮崎駿。1988年4月に公開された。狭山丘陵を舞台に、都会から引っ越してきた2人の姉妹と田園地帯の森に古くから住むといわれる不思議な生き物「トトロ」との心の交流を描いた作品。
※(注2)サシバ
タカ目タカ科サシバ属に分類される鳥類。体長は47~51センチほど。中国東北部、朝鮮半島、日本で繁殖を行い、冬場は東南アジアやニューギニアなどにわたって越冬する。主にヘビやトカゲ、カエルなどの小動物のほか、昆虫類を採食する。
※(注3)ヒクイナ
ツル目クイナ科に分類される鳥類。体長は21~25センチほど。インドから東南アジア、日本にかけて生息している。冬場には北方の個体が南方に渡って越冬することで知られている。主にクモ、カエル、小魚、昆虫類を採食する。
※(注4)ホトケドジョウ
コイ目ドジョウ科に分類される魚。全長は約6~7センチほど。日本の固有種で、青森県、中国地方西部を除く本州と四国に生息している。流れの緩やかな清水に好み、他のドジョウのように川底を這うようにするのではなく、水中を泳ぎまわることが多い。主に魚類、甲殻類、藻類などを採食する。
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