Tasuku Kawazoe
for National Geographic
November 6, 2008
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街の中に残る森
「焦らなくていいんだよ。ゆっくりやればいいんだよ。」森の静寂の中で、優しい声が響きわたる。自然観察会のために、この森を訪れた子どもたちに対して、この森の豊かさを丁寧に教えている際の様子だ。
千葉県松戸市にあるここ「関さんの森」は、今では数少なくなった、街の中に残された貴重な森だ。地域の自然が次々と姿を消していく松戸で、この森だけがほぼ200年前の姿を今も留めている。
しかし、この静かな森は今大きな岐路に立たされている。森に隣接して設置されている子どもの広場などを横切る形で都市計画道路が建設される予定で、市が土地の強制収用に乗り出したのだ。その区間600メートルを除いて、都市計画道路3・3・7号線はすでにほとんど完成しており、松戸市としても全面開通を急ぐ必要がある。自然保護か利便性の確保か、この森をめぐる地権者と市との対立は深刻さを増し、予断を許さない状況となった。
「関さんの森」は、その名が示す通り、元々は個人の所有地であった場所だ。所有者だった関家は約220年前にこの場所に移り住み、代々この森を生活の場として活用しながら、大切に育んできた。この森から得られる木々は家屋や家具の材料としての目的のほか、燃料や肥料としても大切に利用してきた。
やがて、高度経済成長を遂げる日本の中で、この地域の開発も急速に進み、それまで当たり前のように見ることができた街中の身近な森や田んぼが急速に減り、人口の流入が進んだ。そのような状況の中、関家の先代の当主であった関武夫さんは、子どもたちが安心して遊べる場所を提供したいという思いから、この森や関家の敷地内にある広場を無料で市民に開放することにした。
森を開放した武夫さんがどんな方であったのか、関家の現当主で武夫さんの娘でもある美智子さんから話を伺うことができた。「父は、元々山梨県で教師をやっており、教えていた中学校では野球部の顧問になるなど、子どもが大好きな人でした。だから、子どもたちが交通事故を心配せずに遊べる場所を提供してあげたかったようです」。美智子さんが小さな頃には、武夫さんから森に生きる生き物や植物などについて、いろいろと教えられることが多かったという。
この森はそうした武夫さんとその意志を引き継いだ美智子さんらの手によって今も大切に守られている。
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