「関さんの森」は、1.1ヘクタールの屋敷林のほかに、梅林や農園、子どもの広場、歴史的な建物が残された関家の庭などを合わせた2.1ヘクタールほどの広さがある。屋敷林にはコナラやシラカシ、スギ、ヒノキなど約50種の樹木が生い茂り、約40種ほどの野鳥も確認されるなど、小さいながらも数多くの動植物が生息する命の宝庫だ。「関さんの森」を保護・管理している「関さんの森を育む会」のメンバーで、この森に詳しい山田純稔さんに「関さんの森」を案内してもらった。
山田さんによると、この森はかつてクロマツやアカマツなどが数多く見られる松林であったという。遠く江戸川の辺りから見ることができたという松の大木もあった。1980年代に入ってマツクイムシの被害で次第に松が減り、いまはスギやヒノキなどの樹種が優勢になっている。この屋敷林では、10年余り前まではフクロウやタヌキの生息も確認できたという。残念ながら現在その姿は見られなくなってしまったが、それは「関さんの森」自体の問題というよりも、近隣の環境の変化による影響が大きいようだ。森の周りに田んぼや林が残っていた頃には、フクロウなどがエサとする小動物の数も格段に多かったという。今でも、小型のフクロウの仲間であるアオバズクの産卵と子育てが確認されてはいるが、このまま開発が進めばその生存も危ぶまれる。
今回の道路建設予定地となる関家の庭と母屋は、この屋敷林に隣接した場所にある。関家の庭には樹齢200年を超えるケンポナシ(注1)が根を下ろしているほか、江戸時代に建てられた古い門や1780年頃に建てられたとされる蔵が残る。ケンポナシは、バラ科に属すナシの仲間ではないが、食べると甘くナシのような味がすることから名付けられた植物だ。西日本に多いとされ、千葉県ではあまり見かけない珍しい木だ。ケンポナシは「関さんの森」がある幸谷地区のシンボル的な木でもあり、近くにある幸谷小学校ではケンポナシの葉をデザインした校章も使用されている。
さらに、庭の中には、風邪の神様とされる熊野権現を祀った祠もあり、かつて庭に自由に人が立ち入ることができた時までは、近隣の住民が風邪をひくたびにたびたびお参りに訪れていたという。
「関さんの森」を案内してくれた山田さんは最後に、「奥山の反対の言葉として、よく里山という言葉が使われますが、その里山の中心となるのは、あくまでも人の住んでいる集落なのです。だから、森だけを守っていても仕方がない、田んぼ、森、そして集落、それがすべて揃って本当の里山と呼べるのです。そして、ここ「関さんの森」にはまさにそれが残っている貴重な場所なのです」と話してくれた。
(注1)ケンポナシ
クロウメモドキ科の落葉高木。初夏に小型の白い花が咲かせる。生育範囲は北海道から九州までと幅広いが、特に西日本に多く植生している。果肉は2日酔いに効果があるといわれる。