――人間が暮らすハワイ島の北西に1900キロに渡って連なる島々。そこには生命力豊かな太古の世界が残されている。美しくも繊細な野生生物の王国だ。赤い藻に絡みつくウツボ(写真)など、ここに生息する生物の姿をあますところなく写し出すため、現場のスタジオでは背景が白い水槽を使って撮影を行い、作業後に生物をサンゴ礁や海岸へそっと戻す手法が採られた。――
ハワイの島々は、いずれもハワイ島の真下にあるホットスポットから生まれた。ホットスポットから噴き上げるマグマによって形成された火山島が、絶え間なく移動する太平洋プレートに載って1つずつ北西へ運ばれてきたのだ。プレートが移動するスピードは平均で年10センチに満たないため、北西ハワイ諸島の最も端にあるクレ環礁は約3000万年かけて現在の位置まで移動したことになる。その長い道筋で、島々は侵食されて形を変え、最終的に環礁や浅瀬に変わっていく。すべての島は移動を続けながら海中に没し、いずれはクレ環礁の先に連なる海山に加わる運命にある。
これら遠洋の島々は、行政上は米国のハワイ州に属している(ミッドウェー環礁のみ米国の直轄領)。ネッカー島やニホア島などの近隣の島には、南ポリネシアから渡ってきた初期のハワイ人の住居や宗教的儀式の跡などが見つかっているものの、北西ハワイ諸島は定住者を寄せつけなかった。それでも、人間が爪あとを残した過去はある。1900年代初頭には何十万羽もの鳥が殺されて婦人帽子用の羽飾りが作られた。レイサン島ではグアノ(鳥糞石)の採掘が盛んに行われ、ミッドウェー環礁では何千人もの兵士が駐屯し第2次世界大戦で激戦を繰り広げた。
この100年の間、北西ハワイ諸島の生態系の保護や回復を促そうとさまざまな措置がとられてきた。1909年、鳥類が乱獲されているという事態を受け、セオドア・ルーズベルト大統領が島々の大部分を野生生物保護区にすると宣言したことに始まり、2000年にはビル・クリントン大統領が北西ハワイ諸島をサンゴ礁生態系保護区に指定している。保護区が制定されたのは、アメリカのサンゴ礁の大部分がこれらの島々の海域に存在しているからというだけでなく、全世界でサンゴ礁が絶滅の危機に瀕しているためでもある。こうして、地球上に残された最も状態のよいサンゴ礁を研究し保護することが可能となった。近々、この海域は国立海洋保護区にも指定される可能性がある。北西ハワイ諸島を守ろうという試みは着々と進められているのだ。