驚くほど貴重な淡水源
湖や池、河川、小川だけでなく、低湿地や湿原、沼地も淡水域に含まれる。ここで言う淡水域とは、基本的に塩分を含まず、氷床以外の人間が利用可能な水源を指す。
人間が利用可能な淡水は、地球上の総水量の0.5%を下回る極めて貴重な水源だ。淡水は、人間に限らず、トンボやピラニアからビーバーやウシガエルに至るまでさまざまな種類の動物にとっても必要不可欠な水源である。
湖や池は陸路に囲まれている「水を張った洗面器」のようなものだ。一方で、河川や小川は、山頂などの陸地から海洋まで淡水を運ぶ「水脈」である。湖や河川の近くには、低湿地や湿原、沼地などの湿地帯が形成されることが多い。この湿地帯は、多数の動植物の生息地であるだけでなく、洪水を防ぎ、堆積物を保持し、飲料水を浄化する効果もある。淡水域の生態系は、大きな湖や海洋といった単一の水域に流れ込むまでの一連の分水界の中で形成されている。
池に浮いている藻から、川床のセリや湿地帯のアシに至るまで、淡水に植生する藻類や植物は、淡水域に生息する生物が呼吸するために必要な酸素を供給するだけでなく、エサとしても重宝されている。ウキクサのような植物は静止またはゆっくりと動く水の表面で揺れているが、根や柔軟な茎を持つ植物は激しい水流の中で植生している。湿地帯は、魚類から人間に至るまであらゆる生物の食料となる植物であふれている。事実、世界の人口の約半分は、湿地植物である米を主食としている。
淡水域には、魚類の40%を含む、世界の既知の動物の約12%が生息している。さらに、多数の昆虫類や両生類、甲殻類(淡水エビなど)も淡水域を生息地としている。そして、湿地帯は、繁殖活動や巣作り、ヒナの養育、採食活動を行う鳥類であふれており、渡り鳥の休息地でもある。カイツブリのように、1年を通して湿地帯で生活する留鳥もいる。
淡水が貴重な水源であるにもかかわらず、いや、貴重な水源だからこそと言うべきかもしれないが、人間はほかのどの生息環境よりも淡水域を活用してきた。そのために、あらゆる分水界が下水や化学物質によって汚染され、湿地帯は小規模なショッピング・センターや住宅地、農園などに開拓されてしまった。河川には、発電施設や都市部への水を供給したり、灌漑(かんがい)農業を行うためにダムが建設された。全世界で人間が利用する淡水の70%は農業用水に使用されているが、その半分以上は無駄に費やされている。
人間が淡水を利用したことにより、過去100年間で世界中の湿地帯の半分が破壊されてしまった。さらに多くの河川がダム建設や流路整備の対象となり、取り返しのつかない汚染だけが残された。淡水域に生息していた動植物の少なくとも20%が絶滅もしくは絶滅の危機に瀕している。淡水域でこれ以上汚染が進めば、将来、世界で淡水をめぐる戦争が起こってもおかしくはない。
地球に残された貴重な淡水源をより良い方法で管理・保護・共有する取り組みを、国境を越えて行う必要がある。そのための具体的な行動としては、湿地開発に対する反対、農業用水の効果的な利用、水力発電ダムから太陽光または風力エネルギー発電への切り替えなどが挙げられる。
















