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危機を迎えているサンゴ礁――ハワイからのレポート

 サンゴ礁は、低い島を嵐の波や洪水から守り、浜辺の砂やサーフィンに最適な波を作り出す。しかし、サンゴ礁が汚染物質、シルト、海の温暖化、クルーズ船、指で触れたり重い足を乗せたりするダイバーに被害を受けることにより、こうした機能が衰えている。地球規模サンゴ礁モニタリングネットワークによれば、世界でおよそ10〜27%のサンゴがすでに死滅し、2010年までに40%が姿を消す可能性がある。人間の健康に関しては、サンゴは炭坑のカナリアのように、私たちに早期警報を発しているのかもしれない。

アンティアス(ハナダイ)とフィジー諸島のサンゴ礁
アンティアス(ハナダイ)とフィジー諸島のサンゴ礁

 アメリカ人の半数以上(54%)は沿岸部に住み、リゾート地では観光客により人口が増加する。「World Watch Magazine」誌によると、ハワイは1999年の居住者が120万人、観光客が670万人であった。しかし、たとえ彼らが沿岸部から数千キロ離れて住んでいても、沿岸水域に人間の生活の影響が及ぶという。窒素が多量に含まれた下水や肥料など、人間が陸地で生み出す物は最終的に海に到達するからだ。この窒素が大型藻類や海草が繁茂する原因となっているのだ。「下水の窒素やリンなどで富栄養化が進むと、サンゴを中心としたコミュニティが藻類中心へと変わってしまう」とハワイ海洋生物研究所(HIMB)研究員ポール・L・ジョキエルは言う。しかし、まだ望みはある。ハワイのカネオヘ湾で観察されているように、保護していけばサンゴは再生可能で、現に再生が進んでいるのだ。

 HIMBの研究員フェニー・コックスは「1950〜1960年代にカネオヘの街が発展するにつれ、湾内のコーラル・ガーデン区に流れ込む下水の量が増加し、サンゴがその後死滅した理由の1つとなった」と言う。下水は世界中でサンゴに害を与えている。フロリダのキーズ・サンゴ礁が過去5年間に38%死滅した原因を調査したジョージア大学の研究者は、白痘(white pox disease)に感染して死滅したサンゴから、ヒトの排泄物に含まれるバクテリアとウイルスを発見した。この調査結果は2003年の「環境健康展望(Environmental Health Perspective)」で発表され、ヒトの便にいるこれらの微生物により、サンゴがこの病気に感染した可能性があると断定している。米国環境保護局や米国海洋大気庁、国連環境計画のWebサイトでは、下水がサンゴに害を与えるとしている。1978年にカネオヘの下水の流路が沖合の深海に変更された。コックスによれば、現在のカネオヘ湾は澄んでいて、一部の区域でサンゴが再生しているという。

 カネオヘ湾やフロリダのキーズ、あるいはほかの海域でサンゴに害を与えた可能性があると科学者が確信している要因として、シルト(砂と粘土との中間の大きさをもつ砕屑物)や水温の上昇、そして藻を食べる魚が増えたことによる魚の乱獲がある。「もし魚の数が適切な範囲におさまっていれば、藻が多少増えたとしても、おそらくある程度までサンゴは持ちこたえられただろう」とハワイ大学の動物学教授ジョン・スティムソンは言う。

 ジョキエルはまた、ハワイ全土の土壌とシルトの海への流出の影響についても調査している。「森林伐採や過度の放牧、あるいはさとうきび栽培などで地面から植物がなくなると、1年の大半の期間土地を覆うものがなく、大量の堆積物が流出する」とジョキエルは言う。ハワイで行われた海岸沿いの浚渫(しゅんせつ)や盛り土といった工事のすべてが、サンゴ礁にシルトが堆積する原因となった。カウアイ島の手を加えていない土地が土地分譲のため整備され、土壌が流出し、サンゴ礁に影響を与えたことが、ジョキエルの調査により分かった。

 シルトだけではなく商業目的のサトウキビ栽培もまた、それまで自然な小川の生態系を利用して栽培していたハワイ原住民カナカ・マオリ族の主食タロイモ栽培に影響を与えてしまった。ロイと呼ばれるタロイモ畑では、灌漑用水を循環させて流れに戻していたのだが、これが干上がり、海水魚の幼生を育んできた栄養分、淡水、海水の混合が河口で行われなくなってしまったのだ。

 「ハワイの伝統的農業では、水が浪費されることはなかった。アウワイ灌漑システムと自然の水の流れが共に1つのエコシステムを作っていた。水温が高すぎると、流れに住む生物にもタロイモにも適さないので、取水量と取水する水源の範囲が制限されていた」と、オアフ島ワイアホレ渓谷のカネオヘ湾帯水層で1976年から家族でタロイモを栽培している、コミュニティ・プランナーのジョン・レップンは言う。かつては森林の落葉落枝がタロイモの肥料となり、それが河口の食物連鎖の養分となっていた。淡水と海水の境界が最も生物が多様で生物量も多く、流入する水量が大きくなるほど淡水と海水が混在する水域も大きくなるので、カネオヘ湾に流れ込む水とその水域の魚類の数には適正なバランスがあると、「Environment Hawaii」に科学者は発表した。

 生態系とロイを回復しようとする25年にわたる努力の結果、ワイアホレ川に再び水が戻り、いまでは生態系崩壊前の約半分の水量になっている。小川とサンゴ礁を回遊するヒヒワイ固有の小さな貝も復活している。しかし、宅地開発によって流出したシルトが含まれる流水を経由して、この貝が上流に戻れるかどうかはわからないとレップンは述べている。

 ハワイと周辺のサンゴ礁は現在、歴史的な転換期にある。サトウキビやパイナップルの広大な農園にこだわらなければ、この土地は土壌の侵食をより有効に防ぎながら、多様で維持も容易な農業を行うこともできるのだ。ハマクア・コーストでは、以前はサトウキビを栽培していた農園が現在、乾燥に強いタロイモや野菜、バニラビーンズの栽培を始めている。ワイピオ渓谷では、かつてサトウキビ栽培に使用されていた水が自然流水に戻っており、一部では滝も復活して観光客を魅了しているとシエラクラブ・ハワイ支部のディレクター、ジェフ・ミクリナは語る。

 「オアフ島のコア・リッジなどでは、農地に指定された土地が宅地開発に押されている」とミクリナは指摘する。開発と都市化が進めば舗装道路や車道が増えて表面流水が発生し、各家庭からの富栄養化の原因となる水や生活排水が増え、真水の消費量も増大する。シエラクラブによるコア・リッジの調査結果によれば、ハワイ州水資源管理委員会(Hawaii State Commission on Water Resource Management)の2002年の予測では、オアフ島の地下水が20年以内に完全に枯渇する可能性があるという。

 排水の表面流水は人間にも害となる。天然資源保護協議会のレポートによると、2001年に1万3410カ所の海岸が閉鎖され、全国に遊泳禁止勧告が出されている。87%は、大雨や排水流入の後で病原菌の数が多すぎたために閉鎖された海岸で、前年に比べると19%も増えた。汚染された水で泳ぐと感染する最も一般的な慢性病は、吐き気や下痢、頭痛、発熱を伴う胃腸炎と、眼、耳、鼻、喉の病気である。また、排水の汚染により、貝類を食べた人にしばしば中毒が発生する。

 希望の持てる事実も発見され、ムチヤギやアメーバ類、カイメンなどのサンゴ礁の生物が人間の痛み、炎症、白血病、感染症などの治療薬の原料となることが明らかになった。しかし、大気同様に海も化石燃料の燃焼によって温暖化が進んでおり、本格的な調査の前にこの巨大な薬箱が失われてしまう可能性もある。夏の最高気温が1度高くなるだけで、共生する藻類がサンゴ礁から消える可能性があり、やがてサンゴが白化してしまう。白化現象とはサンゴから色が抜け落ち、エネルギー源を失って死滅する現象だ。そうなってからでは遅い。

 極氷が溶けるにつれ、海面は年平均1〜2ミリ上昇している。クック諸島やマーシャル諸島、ミクロネシア、ツバルなどの太平洋諸島にとっては、サンゴの死滅により、国土の減少を食い止めるのに重要な防波堤が失われてしまうことになるのだ。

 海はすべての海岸とつながっている。サンゴ礁は海の骨格で、生命のゆりかごであり、地球環境が健康かどうかの指標でもある。「消費者に言いたいこと? それはもっと簡素な生活を送ることだ」とジョキエルは言う。

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