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環境と自然

究極のエコカー、燃料電池自動車

今年12月、日産初の電気自動車「リーフ」が発売される。化石燃料を使用しないエコカーとしては、電気自動車は燃料電池自動車よりも先に市場に導入された車だ。すでに昨年7月には、三菱自動車から「i-MiEV」が発売されており、続く「リーフ」は補助金が適用されることで実質価格は299万円となり、消費者にとっては手の届く価格が実現している。次世代自動車は普及に向けた動きを加速させている。

電気自動車が大きな注目を集める一方で、その後継として期待されているのが燃料電池自動車だ。経済産業省が今年4月に発表した「次世代自動車戦略2010」では、燃料電池自動車の普及目標は2030年の時点でもまだ数パーセントという見通しに過ぎない。しかし、航続距離が長く、燃料である水素の充填時間がガソリン車並みである点から、各社が力を入れて開発に取り組んでいる。日産自動車のゴーン社長も今年5月、「ゼロ・エミッション(排出ガスゼロ)分野での次の波は燃料電池車だ」と話すなど、開発に意欲を見せている。

進むエコカーへのシフト

ガソリン車と燃料電池自動車の構造の違い 出典:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 よくわかる!技術解説

第1回でも述べた通り、環境問題とエネルギー問題が深刻化した今、CO2排出量の抑制と脱化石燃料はグローバルな課題となっており、私たちの生活と密接に関わりを持つ自動車の技術開発(エコ化)は、社会を変える大きなインパクトを持つ。そのため、従来のガソリン車から他のエネルギーを利用したエコカーへのシフトが求められている。

ガソリン車に変わる次世代自動車としては、電力シフトを促す電気自動車をはじめ、バイオ燃料で走るバイオエタノール車や、排出ガスを低減したクリーンディーゼル車などの開発が進められている。そして、水素シフトを担うのが燃料電池自動車だ。

次世代自動車の中でも特に燃料電池自動車と電気自動車は、走行時にCO2を排出しないゼロ・エミッション車である点、また量産化が期待されている点で比較対象とされやすい。第4回では、燃料電池自動車の仕組みや構造をはじめ、その特徴も電気自動車と比較しながら解説していきたい。

燃料電池自動車が走るメカニズム

電気自動車と燃料電池自動車の構造の違い 出典:水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)

電気自動車が外部から充電した電力でモーターを回す仕組みとなっているのに対し、燃料電池自動車は燃料(水素)を充填し、燃料電池で空気中の酸素と反応させることで自ら発電し、その電力を使用して走行する。燃料電池車には、燃料電池本体、モーター、バッテリーが搭載されており、燃料電池で発電した電気がモーターを回す。さらに、減速時に車輪の回転から得られるエネルギーを電気に交換し、二次バッテリーに蓄電しておくことで、発進時のモーターへの電力供給の補助や停止時のエアコン、オーディオ、ヘッドライト等への電力供給もできる。そのため、非常にエネルギー効率の良い仕組みが整っている。

車内の構造

日産自動車モデル「X-TRAIL FCV」

燃料電池自動車の構造を知るため、水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)の施設で現在開発中の燃料電池車を見学させてもらった。JHFCでは、燃料電池自動車の実用化に向け、トヨタやホンダをはじめとした自動車メーカーの燃料電池車によるさまざまな実験とデータ収集を行っている。今回は、日産自動車モデル「X-TRAIL FCV」を例に説明してもらった。

まず燃料電池車で最も重要な役割を果たす燃料電池は、ドライバーシートと助手席の下にスタックとして積まれている。スタックの中はかなり機密事項が多い部分であるということで見せてもらうことはできなかったが、日産自動車の場合、セルが400枚程度入っており、最高出力は90kWだという。

スタックセルナフィオン電極基材

水素タンク

車両の前部には、燃料電池で作られる直流の電気を交流に変換するためのインバーターが搭載されている。また補助電源となるバッテリーにはリチウムイオン電池が採用され、後輪の上部に位置している。

燃料となる水素は、樹脂タンクに貯蔵され後部座席の下に配置されている。日産の場合、水素タンク1個で約500キロの距離を走行できるだけの水素を貯蔵している。一方トヨタの場合は、タンクは4本に分かれて積まれており、各社で仕様は異なる。また、より多くの水素を貯蔵するための水素貯蔵技術の改良も同時に進められている。

水素を燃焼させて走るエコカー

燃料電池自動車ではないが、同様に水素を燃料として走行する水素エンジン車も開発が進められている。水素エンジン車は、ガソリンの代わりに水素を燃焼させてエンジンにより発電機を回し、発電された電気でモーターを稼動させる仕組みとなっている。

燃焼の過程で極微量ではあるが窒素酸化物(NOx)が排出されるため、ゼロ・エミッションではないが、CO2排出量はゼロとなり、環境に優しいエコカーだ。また、燃料電池車の場合には、燃料電池に使用されるレアメタル(白金)がコスト高の要因となっているが、水素エンジン車の場合はガソリン車と同等量のレアメタルの使用に留まる。さらに、既存のガソリン車の部品を流用して開発が進められるため、燃料電池車と比較すると低コストで開発できるというメリットがある。

このタイプのエコカーはマツダなどが開発を進めている。マツダが現在開発している水素エンジン車はガソリンとの併用が可能なデュアルフューエルシステムとなっており、水素ステーションがまだ少ない現状では実用性が高いといえる。

燃料電池自動車 VS 電気自動車 性能比較

EVとFCVの比較 出典:水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)

ここまで燃料電池車の仕組みや構造について触れてきたが、性能についても電気自動車と比較しながら見ていこう。

まず、総合効率でいうと、燃料電池自動車が0.99MJ/kmであるのに対し、電気自動車は0.94MJ/kmと燃料電池車を上回っている。またCO2排出量についても、電気自動車のほうが排出量は少ない。

上記の数値は、Well to Wheelと呼ばれる比較評価結果である。Well to Wheelは一次エネルギーの採掘から走行までの全行程を含めた場合の総合効率、もしくはCO2排出量の評価基準である。そのため、同じ車両を使った計測でも国によって異なる結果となることがある。それは、各国の電力バランスが異なるからだ。日本の場合、CO2を排出しない原子力発電が3割、水力発電が1割を占めており、残り6割はCO2を排出する火力発電を使用している。そのため、日本におけるEVの1kmあたりに排出されるCO2の量は、エネルギー源の7~8割を原子力に頼るフランスに比べ多く算出されるのだ。

充填中の燃料電池自動車

燃料電池自動車は、Well to Wheelでは電気自動車にまだ及ばないが、航続距離と燃料の充填時間で強みを持っている。燃料電池自動車の航続距離は350キロ以上であり、2009年11月に公道を使用して行われた実証実験では、東京霞ヶ関から北九州市までを3台が走行し、計1,137キロを2回の充填で完走している。また、充填時間についても燃料電池車に軍配が上がる。燃料電池自動車の場合、充填時間は5分程度とガソリン車並みだが、電気自動車は急速充電でも30分、一般家庭の電源から充電した場合には数時間を要する。JHFCでは燃料電池自動車の充填時間を3分以内にすることを目標に今後開発を進めるという。

一方、インフラの整備まで考慮すると再び電気自動車が優勢となる。すでに電力網が存在する電気自動車にとって、エネルギーの供給については燃料電池車のように大きな課題とはならない。充電場所も、供給スタンド以外に家庭での充電も可能であることはメリットだ。燃料電池自動車の場合、燃料となる水素は既存ネットワークでは流通しておらず、まったくの新規でインフラを整える必要があることが高いハードルとなっている。また、水素を供給する水素ステーションの建設にもコストがかかるため、普及への課題はいまだ多い。

普及への道のり

電気自動車に比べると、燃料電池自動車が実用化されるのはまだ遠い未来のことと感じるかもしれない。しかし、電気自動車の弱点を補うことができる次世代自動車は燃料電池自動車だと言えるだろう。航続距離が短い電気自動車は通勤や近場への交通手段として、一方、燃料電池自動車は長距離移動に使われるというように、電気自動車と燃料電池自動車は各々のメリットを活かして共存していく可能性を秘めている。

しかし、前述の通り、燃料電池自動車には水素インフラをはじめ、
コストなどが大きな課題として残っているのが現状だ。
次回は、燃料電池自動車の課題と普及に向けた動きを見ていこう。

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図『電気自動車と燃料電池自動車の構造の違い』『EVとFCVの比較 』 出典:


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