自動車用燃料の起源
バイオ燃料の歴史は、自動車の歴史と重なる。20世紀初頭に、ヘンリー・フォードは、彼が創業したフォード・モーター社のフォード・モデルTの燃料として、エタノールを使用する予定だった。また、初期のディーゼル・エンジンは落花生油を燃料としていた。
しかし、莫大な埋蔵量の石油が見つかったことから、その後数十年間は、ガソリンやディーゼル燃料が安価で供給され、バイオ燃料の多くは忘れ去られていた。ところが近年、石油の価格が上昇し、さらに二酸化炭素の排出による地球温暖化を懸念する声が高まるにつれて、バイオ燃料に再び注目が集まっている。
実はガソリンもディーゼルも、元を正せばバイオ燃料だった。しかし、土に何百万年間も埋まっていた動植物の遺骸が長い年月をかけて分解されてできたため、化石燃料と呼ばれている。一方、バイオ燃料の原料は生きている植物である。
アメリカで使用されているガソリンの多くに、バイオエタノールが混合されている。バイオエタノールはトウモロコシを大量に加工して生成されたものであり、アルコール飲料に使用されるエタノールと基本的には同じ物質だが、原料が異なる。その製造方法はさまざまだが、通常は化学反応や発酵処理、加熱処理により、工場でデンプン、砂糖、その他の分子に分解される。加工後に残った物質から不純物を取り除き、自動車用燃料として使用する。
世界各国でさまざまな種類のバイオ燃料が利用されている。例えば、ブラジルでは何十年も前から、サトウキビを原料としたエタノールを生成し、ガソリンへの添加物としてではなく、純エタノールを燃料に走行する自動車も存在する。さらにヨーロッパなどの地域では、バイオディーゼルというディーゼルに似たバイオ燃料を、ヤシ油から生成している。
一見したところ、バイオ燃料は地球温暖化の理想的な解決策のように思える。自動車は、大気中の二酸化炭素の主な排出源であり、二酸化炭素こそが地球温暖化の原因となっている代表的な温室効果ガスだからだ。バイオ燃料の場合、その原料となる植物は二酸化炭素を吸収して成長するため、走行する際に排出する二酸化炭素とほぼ同程度の二酸化炭素を成長段階で吸収していることになる。さらに地下資源である石油とは違って、燃料の原料となる作物はいつでも栽培できるため、バイオ燃料は再生可能資源でもある。
しかし残念なことに、事態はそれほど単純ではない。原料となる作物を栽培し、肥料や農薬を製造し、収穫した作物を燃料に加工するまでの一連の加工作業において、大量のエネルギーが消費されている。実際、トウモロコシを原料とするエタノールが供給するエネルギー量は、その栽培や加工に必要とされるエネルギー量を上回るかどうかをめぐって議論が巻き起こっている。またバイオ燃料の製造過程で使用されるエネルギーの大半は石炭や天然ガスを原料とするため、完全な代替は不可能である。
将来的には、セルロースを多く含む雑草や若木からバイオ燃料を生成する方法の開発が期待されている。セルロースは植物の細胞壁を形成する堅い物質で、植物の主成分である。セルロースを原料としたバイオ燃料の生成に成功すれば、既存のバイオ燃料よりもエネルギー効率が高く、二酸化炭素の排出量も少ない理想的な燃料が誕生すると期待されている。















