キツネザルの英名「lemur」の語源となったラテン語「lemures」は「幽霊」を意味する。マダガスカルの人々は昔からこの霊長類を精霊と考えてきた。これはネズミキツネザルが夜間に活動することや、不気味な眼差しの大きな目が理由だと考えられる。
ネズミキツネザルは、ほかのすべてのキツネザルと同じく、アフリカ大陸の東海岸沖に浮かぶマダガスカル島に生息する。ネズミキツネザルは8種類おり、そのうちのいくつかは、ここ数年の間に発見されたばかりである。霊長類研究における新種発見は珍しく、この魅力的な動物がまだ多くの謎を秘めていることが分かる。
ネズミキツネザルはメスが支配する15匹ほどの群れで生活している。ほとんどの時間を樹上で過ごし、枝から枝、木から木へと素早く動き回る。日中は高い木の上で眠り、夜になると昆虫や果実、花などのエサを探す。環境適応力が高く、しっぽとうしろ足に脂肪を蓄え、食料が乏しい時期にそれを燃焼する。体重の35%もの脂肪を蓄えることができる。メスはオスより体が小さく、マダガスカルの乾季にあたる4〜10月まで休眠期に入る。この時期はほとんど動かず、木の穴を離れることはあまりない。しかし同じ時期のオスは活動的で、繁殖期に備えて序列を決めるようである。
また、ピグミーネズミキツネザルは世界最小の霊長類だ。頭と体を合わせても体長は6センチ以下だが、しっぽの長さはその倍以上ある。この絶滅寸前の夜行性のキツネザルはマダガスカル西部の乾燥した森林地帯に生息し、その森林の木々から離れることはほとんどない。この珍しい霊長類についてわかっていることはほとんどない。
ネズミキツネザルの捕獲は禁止されているが、珍しいペットとして取引するための密猟が後を絶たない。生息地であるマダガスカルの森林地帯が失われつつある中で、最も絶滅が危惧されている動物である。